アセットアロケーション(各資産クラスへどのように資産配分するか)を真面目に考えている当ブログで、ウェルスナビについて考察しないわけにはいけません。ここではもっとも有名なロボアドバイザーとして実績があるウェルスナビ(WealthNavi)の運用を一緒に見ていきましょう。
- 経済はあまりわからないけど、投資はしっかりやりたい人(ほったらかしOK!)
- 手軽に負担がかからないよう投資をしたい人(スマホ1台で投資できる!)
- これから投資することを考えている人(1万円から始められる!)
- 税金が気になる人(2024年からの新NISAにも完全対応!)
ウェルスナビとは?
ウェルスナビ(WealthNavi)は投資家に代わってITテクノロジーを駆使し資産運用のサポートを行なってくれる、評判の高いロボアドバイザーです。
2023年のオリコン顧客満足度調査ではロボアドバイザー部門で3年連続の1位になるなど、多くの投資家に支持されています。
とはいえ「初心者がウェルスナビを利用して大丈夫?」「自分に向いているの?」「損失が出て終わったりしない?」など、疑問に思っている方も多いはず。
この記事ではそんな疑問にも答えていきましょう。
ウェルスナビの成績
まずはウェルスナビの運用成績を見てみましょう。初期資金100万円から月々3万円を積み立て、リスク許容度5(もっとも高いリスクでの運用)で投資した場合、以下のような推移となります。

グラフの灰色の線が積み立てた金額、青色の線が資産額です。2020年3月のコロナショック時こそ一時的に元本割れしていますが、それ以降は安定的に増えていることがわかります。
もしコロナショックで米国株価指数へ連動する投資信託等へ投資していた場合、2月の高値から30%を超える下落でした。それと比較すると、ウェルスナビでは債券や金へ分散投資していたため、(リスク許容度次第ですが)下落は緩やかな運用結果でした。
一方、その後は円ベースで見ると円安効果もあり、安定的に資産が増えていることがわかります。
この結果から、長期で見るとウェルスナビによる運用はパフォーマンスが安定しており、長期投資に向いていることがわかりますね。
ウェルスナビの運用の仕組み
ウェルスナビの運用のベースとなる理論は、1990年に「資産形成の安全性を高めるための一般理論形成」として、ハリー・マーコウィッツ、マートン・ミラー、ウィリアム・シャープらがノーベル経済学賞を受賞した理論です。
この内容は現代ポートフォリオ理論として資産運用理論のまさに礎であり、効率的な資産運用を行う方法を示したものです。
内容は難解ですが、簡単に言えば「もっとも効率的に資産運用するためには、どの資産クラスへどれだけ投資すればよいのか?」という問題に対する答えを示すものです。
投資の世界では分散投資すればするほど効率的に投資リターンを得ることができるとされています。投資対象となる資産としては、株式や債券だけでなく、コモディティと呼ばれる金や不動産などがあげられます。しかし、多くの種類の資産の動向を追って、どれだけ投資するか決めることは大変ですよね。

数学的に求めることが難しい「もっとも効率的に運用できる最適化ポートフォリオ」による投資を簡単に実現してくれるのが、ウェルスナビというサービスというわけですね。
ウェルスナビの運用を詳しくしてみる
先ほどあげた運用実績の例は、リスク許容度5で月々の積み立てを行うケースでした。
もう少し詳しく見てみるため、最初に一括投資した場合の推移をリスク許容度別に見てみましょう。

円ベースで見ると、いずれのリスク許容度でも資産がしっかり増えていることを確認できますね。
また、ここでは客観的に運用内容を評価するため、実際にウェルスナビでの運用を再現してみます。
ウェルスナビでは資産運用の理論的な裏付けとなる資料が公開されています。実は、それをしっかり読み解けばウェルスナビと同様の運用を行うことができるのですが、全てを公開することはウェルスナビさんへご迷惑をおかけしてしまうため、一部のみ公開としています。
2023年4月〜
2022年の株式市場下落や金利上昇、コモディティ価格上昇が反映されています。
資産クラス間の相関と各資産クラスのリスク・期待リターン(ETF経費控除後)および、手元計算したリスク許容度5の資産ウェイトは以下の通り。
資産クラス | 米国株 | 日欧株 | 新興国株 | 米国債券 | 物価連動債 | 金 | 不動産 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
米国株 | 1.0 | 0.9 | 0.7 | 0.4 | 0.5 | 0.1 | 0.8 |
日欧株 | 0.9 | 1.0 | 0.8 | 0.4 | 0.5 | 0.2 | 0.7 |
新興国 | 0.7 | 0.8 | 1.0 | 0.4 | 0.4 | 0.3 | 0.6 |
米国債券 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 1.0 | 0.8 | 0.4 | 0.5 |
物価連動債 | 0.5 | 0.5 | 0.4 | 0.8 | 1.0 | 0.4 | 0.7 |
金 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.4 | 1.0 | 0.2 |
不動産 | 0.8 | 0.7 | 0.6 | 0.5 | 0.7 | 0.2 | 1.0 |
資産クラス | リスク | 期待リターン | ウエイト |
---|---|---|---|
米国株 | 16.8% | 7.1% | 40.0% |
日欧株 | 16.5% | 7.0% | 35.0% |
新興国 | 17.0% | 6.3% | 10.0% |
米国債券 | 4.8% | 2.9% | 5.0% |
物価連動債 | 5.7% | 3.1% | 0.0% |
金 | 14.4% | 3.4% | 5.0% |
不動産 | 17.8% | 6.3% | 5.0% |
ウェルスナビの失敗、デメリットとは?
手数料の存在
ウェルスナビを始める上でまず気になるのは、手数料が存在することです。ウェルスナビで投資対象となるETFの購入・売却の取引自体に手数料はかかるのですが、それに加え、資産残高に応じた手数料をウェルスナビ側へ支払う必要があります。
最適なポートフォリオを計算するだけでなく、自動でリバランスまでしてくれるため、当然といえば当然なのですが、年率税込1.1%(3,000万円を超える分は年率税込0.55%)は、インデックス投資する上でそれなりに高いコストです。毎年かかってきますからね。
とはいえ、ウェイトを一定に保つために各資産価格を見続ける必要がなくリバランスを行う手間もなくなる点、税金を最適化してくれるDeTAX機能がある点を踏まえると、「手間」「時間」を節約できると考えれば、高すぎるというものではないでしょう。
NISAの非課税期間が5年に限られている
ウェルスナビの「おまかせNISA」は、NISAの非課税メリットを享受しつつ、効率良く資産運用ができる投資サービスです。
しかしおまかせNISAは「つみたてNISA」での運用ができず、一般NISAと同様に非課税期間が5年のみです。非課税期間の5年が終わってからリバランスすると、その分の利益は課税対象となり税金が発生してしまいます。
とはいえ、非課税期間の終了時は翌年の非課税投資枠に金融資産を移すロールオーバーが可能となり、非課税枠で運用を継続することは問題なくできるため安心してください。「つみたてNISA」と比べると、おまかせNISAでは非課税期間が短い分、非課税投資枠が多く、まとまった資金で投資したい方にもぴったりです。
また、ウェルスナビは2024年から始まる新NISAにも対応しています。「おまかせNISA」は2024年以降、新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方で運用可能になり、より複雑になりそうな運用を一手にお任せすることができます。
元本割れ
投資する上でもっとも気になるのが投資元本割れとなってしまうことでしょう。いくら長期的に見て株式市場が上昇するとはいえ、価格変動のリスクはあります。また、ウェルスナビの投資対象は米ドル建てのETFですから、為替リスクもあります。

元本割れで投資終了することを防ぐためには、資産価値が上がるまで長期で投資を続けることが重要です。一時的な含み損(時価評価上の一時的なマイナス)に怯まず、コツコツ積み立てていくことで取得単価が下がり、マーケットの上昇とともにプラス圏へ浮上することを待つことで、最終的にプラスで終えることができるようになります。
また、途中で投資を止めないためには、投資はあくまでも余裕資金で行うということです。生活に必要な資金を投じて、支払いが必要になったとき、投資資産を取り崩すと一時的な含み損を確定してしまうことにつながります。
まとめ
ウェルスナビはノーベル賞を受賞した、現代ファイナンス理論に基づく投資を誰でもお手軽に始められるサービスです。株式だけでなく債券やコモディティへの分散した投資を最適化して行うことができ、自分で売買する必要はなく自動でリバランスしてくれます。
税金を最適化してくれるサービスだけでなく、2024年から始める新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方にも対応しています。
「積立投資で株式だけでは不安!」という方は、ウェルスナビを活用してみるのもよいでしょう。