インデックス×レバレッジで最速資産形成するためのETFは、どれを選ぶべきなのか──。
日本でも「レバナス」と言われるレバレッジ型投資信託が飛ぶように売れるようになりますが、実はさらにレバレッジが高く効率的に運用できる海外ETFが存在します。その中でもTQQQという銘柄は人気が高かったのですが、日本の証券会社で取り扱いがなくなり、代わりにどのETFを使うのかは悩みどころ。
この記事では、米国インデックスにレバレッジをかけて連動するETFについて比較してみます。
日本の証券会社でTQQQが買えなくなった!?(※最近買えるようになりました..!)
TQQQといえばNASDAQ100インデックスに3倍のレバレッジをかけた投資が簡単に行え、近年のグロース株躍進もあり非常に人気の高いETFだったのですが、2021年11月に突如日本で買うことができなくなりました。
TQQQを扱っていた国内証券会社はサクソバンク証券のみであり、誰でも買うことができていたのですが、日本国内で一般投資家は投資できない銘柄であることが判明しました。SBI証券など他の証券会社でも一般投資家はTQQQへ投資できませんでした。

海外証券会社を含めれば、Interactive Brokers証券(IB証券)やFirsttrade証券なら個人でも取引できるのですが、TQQQを取引するためには、その証券会社で先物・オプションなどデリバティブ商品に関して規定以上の取引実績が必要であり、非常に難しいというのが現状です。
そんな中、2022年11月1日よりSBI証券で一般投資家でもTQQQを取引できるようになりました。非常に人気の高いETFでしたので、短期トレード中心の方にとっては大きな選択肢が増えたのではないでしょうか?
※レバレッジ型のETFは価格変動が大きいことに加え、連動対象となる指数の動きによってはETFの価値が毀損します。投資にあたってはこれらの点に注意するとともに、中長期保有目的でなく短期トレード目的で保有することを強く推奨します。
ここではTQQQと他の3倍レバレッジ型のETFと比較していきましょう。
ある時点でのリターンを比較してみると・・・?
低コストでの投資を目的にETFを選ぶためにはいくつかの観点が考えらます。経費率やシャープレシオや分配金利回りなど様々な指標がありますが、大きなキャピタルゲインを狙うレバレッジ型のファンドでは、騰落率(リターン)で選ぶのがよいでしょう。TQQQも含め筆者が選んだ代表的な4銘柄を横に並べてみるとその特徴は明らかです。
なお、比較は2021年末(2021年12月31日)時点での情報をもとにしています。
TQQQ | SPXL | TECL | SOXL | |
---|---|---|---|---|
名称 | PROSHARES ULTRAPRO QQQ |
Direxion Daily S&P 500 Bull 3X Shares |
Direxion Daily Technology Bull 3X Shares |
Direxion Daily Semiconductor Bull 3X Shares |
運用会社 | ProShares | Direxion | Direxion | Direxion |
設定日 | 2010/02/09 | 2008/11/05 | 2008/12/17 | 2010/03/11 |
連動指数 | NASDAQ100 インデックス |
S&P500 インデックス |
テクノロジー セレクトセクター インデックス |
ICE セミコンダクターズ インデックス(*1) |
経費率 | 1.01% | 1.03% | 1.02% | 0.99% |
分配時期 | 3・6・9・12月 | 3・6・9・12月 | 3・6・9・12月 | 3・6・9・12月 |
年間分配金 | $0.0000595 | $0.3170400 | $0.2790900 | $0.0304400 |
分配金利回り | 0.00% | 0.44% | 0.69% | 0.10% |
年間騰落率 | 82.99% | 98.49% | 112.13% | 118.68% |
価格(2021年末) | $ 83.17 | $143.41 | $ 86.23 | $ 68.01 |
価格(2020年末) | $ 45.45 | $ 72.25 | $ 40.65 | $ 31.10 |
標準偏差(年) | 50.67% | 43.67% | 51.96% | 65.68% |
シャープレシオ(年) | 1.09 | 0.89 | 1.00 | 0.93 |
(*1)SOXLのベンチマークはそれまで「フィラデルフィア半導体セクターインデックス」でしたが、2021年8月25日から「ICEセミコンダクターズインデックス」に変更されました。
この比較から2021年において騰落率はSOXL>TECL>SPXL>TQQQであることがわかります。
なお分配金は上記の表のように最大で年4回発生する可能性があるのですが、株式の配当状況等によって分配金がない回もありますのでご注意を。
なぜ分配金利回りや年間騰落率に差が出るのか?
先ほどの比較を見ると、同じように米国株式という名目のETFにもかかわらず、なぜこれだけの差が出るのか気になる方も多いでしょう。それは、端的に言えば連動するインデックスが異なるため、組み入れている銘柄やウエイトが異なることに起因します。
もう少し長めの期間で比較してみましょう。4ファンド(TQQQ、SPXL、TECL、SOXL)を比較します。これの中で歴史が浅いVOOの設定日(2010/03/11)から2021年末までのパフォーマンスは以下の通りです。


グラフはETF価格の変動を示しており、青がTQQQ、赤がSPXL、黄色がTECL、緑がSOXLです。少しわかりにくいですが、青色のTQQQがもっとも上に位置しており、黄色のTECLと緑のSOXLは比較的重なっており若干SOXLが上の方にあり、それよりさらに下に赤のSPXLが位置しています。つまり、長い期間で比較すると、単純な騰落率ではTQQQがもっとも上昇し、次いでSOXL、TECL、そしてSPXLの上昇率がもっとも低いことになります。2020年3月のコロナショック時の下落を見ると、4つのETFはいずれも大きく下落し、それ以降の上昇が顕著です。
それぞれのETFの特徴を順に見ていきましょう。
TQQQ
TQQQは、NASDAQ100インデックスの日々の騰落率の3倍の値動きを目指すファンドです。
NASDAQ100は米国全体の株式市場と比較すると情報技術セクターのウエイトがかなり高くなっており、グロース色が強く、市場全体の動きに対してより敏感(ハイベータ)なインデックスです。そのため、TQQQは他のレバレッジ型ファンドよりも値動きが大きく、かつ近年の躍進する多くの銘柄の恩恵を受けています。
日本の証券会社では一般投資家が新規購入できなくなってしまったとはいえ、どうしても比較対象となってしまう良いファンドでした(遠い目...)
SPXL
SPXLは、S&P500インデックスの日々の騰落率の3倍の値動きを目指すファンドです。
S&P500は米国上場の上位500社からなるインデックスですが、米国株式全体の約80%を占め、全米株式とほとんど同じ動きをするインデックスです。そのためSPXLは全米株の3倍ブルのファンドと言っても差し支えないでしょう。
様々なセクターに分散している分、他の同じだけレバレッジがかかったファンドと比較すると、リターンは単年で見ても中長期で見ても控えめ。今回の比較対象ファンドの中では、コストはもっとも高いです。
TECL
TECLは、テクノロジー・セレクト・セクター・インデックスの日々の騰落率の3倍の値動きを目指すファンドです。
テクノロジー・セレクトセクター・インデックスはS&Pダウンジョーンズ社が算出する指数であり、米国の情報技術セクターに属する企業から構成されるインデックスです。情報技術は近年躍進がめざましく、米国株全体のパフォーマンスを牽引するセクターなだけあって、S&P500に連動するSPXLよりも大きな値動きを示します。
今回紹介する4ファンドの中で、2021年にはもっとも大きく上昇しましたが、一方で2022年の下落もかなり大きな影響を受けているファンドのひとつです。
SOXL
SOXLは、ICE・セミコンダクターズ・インデックスの日々の騰落率の3倍の値動きを目指すファンドです。
ICE・セミコンダクターズ・インデックスはICE(Intercontinental Exchange)が算出する指数であり、米国の半導体関連の企業から構成されるインデックスです。情報技術の発達に伴い半導体の需要も大きく上昇しており、情報技術全体に連動するTECLよりも大きな値動きを示します。
中長期のリターンはTQQQに次ぐ高さのリターンであるものの、半導体に絞った銘柄であるため企業数はかなり絞られ、リスクは高いです。また、今回の比較対象ファンドの中では、コストはもっとも低いです。
レバレッジ型のETFはどれを選ぶのか?
もしどれかひとつを選ぶとすると、私ならTECLを選択します。理由としては、情報技術のセクターは今後どのような場面でも将来大きな成長することを確信している、という点があげられます。
どのETFへ投資するにせよ、海外ETFへ投資するためには専用の証券口座が必要となります。最近では多くの証券会社が米国株を取り扱うようになったため、海外ETFを購入するのとあまり変わらない手間で購入できるようになりました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

レバレッジ型のファンドは市場動向に大きく左右されやすく、短期売買向き
好調なマーケットにレバレッジをかけた値動きであるため、意外と多くのインフルエンサー達が長期投資への活用を奨めているのですが、本来レバレッジのかかるファンドは短期売買向きの商品です。レバレッジがかかるために下落時に大きく価値が毀損し、あまり知識のない一般投資家が長期で保有するには不向きな商品です。また、信託報酬や経費率がインデックス型の水準というより、アクティブファンドの水準ということもありますね。
実際、2020年はコロナショッックで大きく下落した後、レバレッジ型ETFの価格はそれを上回る上昇を見せましたが、利上げを控えた2022年初には市場全体の調整が急速に進み、レバレッジファンドの価値も大きく毀損しています。
しかし、レバレッジ型のファンドの大きな価格の動きは短期的な売買を狙うにはむしろ大きな魅力となります。実際、2022年は大手ネット証券で外国株式の信用取引が開始される予定であり、さらに大きなポジションを取ることが可能となります。
このように、レバレッジ型のファンドへの投資にあたっては注意も必要ですが、同じような投資対象に見えて少しずつ結果が異なるというのが投資における銘柄選びの醍醐味といえるでしょう。