独立して仕事を辞めるタイミングは?[必要な資金は○○円!]

マネー論

専業トレーダーになるために、一体いくら元手があれば仕事を辞めて独立できるのだろうか──。

仕事の片手間で投資しながら、いつかは独立しようと意気込むことを考えているのであれば、必ず考えていることでしょう。

特にお勤め中の方には脱サラという言葉が響きます。しかし専業トレーダーとして活動するにはかなりのリスクを伴いますから、人生においてかなり重要な選択となることは間違いありません。

この記事では、実際に脱サラして専業トレーダーになった私が経験を元に語ってみます。

まずは脱サラしたい理由を分析しよう

独立のためにいくら必要なのか考える前に、まずは自己分析です。あなたはなぜ脱サラしたいと考えるのでしょうか?

  • 通勤の満員電車が憂鬱
  • 職場の嫌いな上司や同僚
  • 関係者との利害調整や人間関係に疲れた
  • 残業代が出ず、土日もサービス出勤
  • 給料が上がらないから一発当てたい
  • 仕事より家庭の時間を大事にしたい

私が考えるに、専業トレーダーとして成功するために「投資の上手さ」は必要条件です。しかし、それと同じくらい重要な点として「なぜ専業でやりたいのか」という理由が重要だと考えます。もし、先にあげた理由であるならば、専業でやるには理由が足りないというか、覚悟が足りないように思えます。

専業トレーダーになると、失敗を他人のせいにすることはできません。失敗は全てが自分が行うと決めた取引に起因するものであり、他人に頼ることはできません。自分で決めた行動をとった結果が、ダイレクトに損益へ結びつきますから、それだけの覚悟というものが必要になります。

また、生計を共にする家族がいる方はよく話し合うことが必要です。もしあなたが家計を支えているのであれば、独立するリスクについて今更説明するまでもないでしょう。そこまでして独立して専業で取り組む必要があるのか、よく考えてみてください。

ここまで脅しておいて言いにくいのですが、私が専業となったのは結果論です。もともと学生時代に投資を始め、新卒として就職してからも続けていたところそれなりに上手く行った中、会社で働き続けることが難しいくらい心が完全に折れてしまったので、会社を辞めると同時に専業になってしまいました。

専業になったときの目標やイメージを明確にしよう

チャート

専業として行うことを決断する前に、もう少しイメージを膨らませてみましょう。もし専業になったら資産額はどのような推移になるでしょうか?

専業で行うのですから、給料のような定期的な収入源は断たれます。そのような中、家賃や水道光熱費・通信費・食費や人によっては教育費などの支出が毎月発生することになります。一方で、投資を行うにはある程度の資金として投資元本が必要になり、これが0になれば完全にゲームオーバーです。そのため専業として生計を立て続けるためには、ざっくり言うと以下の1番の式を満たし続ける必要があります。

  1. 投資収益 > 支出
  2. 投資収益 = 投資元本 × 投資利回り

結局、投資で得られる収益が支出を上回り続けるのが最低条件ということですね。もし、ある程度ご高齢の方であれば資産を少しずつ取り崩していっても問題ないのですが、20代から50代ぐらいの方であれば投資元本を取り崩していくと老後の生活がかなり厳しいです。もっと言えば、利益の出ない時期があることも考慮すれば、収益はできるだけ投資元本に回す(再投資)なり、生活防衛資金として投資に回さない分とするなりといった対応も必要です。

仮に、毎月50万円の収益を獲得し(これはそれなりに高いハードルです)そこから一部を生活費と生活防衛資金に回し、残りを投資元本に足していく目標を立てたとします。市場が開いているのは平日ですから、取引できるのは月に20日程度です。平均的に考えれば、1日に2.5万円収益を上げていくことが必要です。

より具体化してみると、例えば松井証券の1日信用取引は1回の注文が100万円を超えると取引手数料が無料です。これを利用して信用取引によりレバレッジ3倍の資金効率で取引したとしましょう。

どの銘柄でもいいのですが、それなりに大きなロットにも耐えられるだけの取引高とボラティリティがあるソフトバンクグループ(9984)で1円抜きを狙うとすると、最低取引ロット600,000円(1株約6,000円と仮定)に対して、1往復で100円の利益となります。投資元本を100万円とすればレバレッジ3倍で300万円の取引が可能ですから500株相当の取引が可能となり、500株で往復をとると利益は500円。これを50往復すると1日で2.5万円の収益となります。

1日で50往復がどれくらいの取引かと言えば、東証の取引時間は9:00〜11:30と昼休みを挟んで12:30〜15:00で合計5時間(2021年時点)ですから、1時間あたり10往復、およそ5〜6分で1往復する必要があります。

これがどれくらい難しいのか分かる方は中々の強者だと思います。取引回数の観点で言えば不可能ではないにしても、たとえ1円でもコンスタントに値幅を取り続けることは意外と難しいのです。当然大きな失敗を避けるために、予想と逆に価格が動けば即損切りが必要であり、安定した利益になりにくいのです。

もしこの取引を1年間上手く行えれば、利益を投資元本に足さずに100万円で回し続けると、1ヶ月20日で換算すれば利益は1年で600万円、つまり投資利回りは600%になります。ここまで書くと中々難しいということが伝わりますでしょうか?

改善案としては、値幅の観点で1株あたり2〜3円の値動きを狙い損切りを1〜2円で置くことで、取引回数を稼がなくても良いとするもの、ただしこれは必要な投資利回りという点では変わりません。現実的な案としては、もう少し投資元本を投入し取引ロットを大きくすることで必要な取引回数を減らすことが考えられます。投資元本を倍にすれば、必要な投資利回りは300%(これもなかなか難しいのですが)であり、難易度は下がります。

投資元本と生活防衛資金を分けよ

疑問

当然ですが、取引は上手くいくこともあればそうでないこともあります。また、何らかのトラブルで平日にトレードできない期間が発生するかもしれません。そのようなとき、自分達を守ってくれるのが生活防衛資金です。

毎月お給料という名の収入をもらっている方は意識しにくいですが、生活防衛資金があるということは心の平穏に繋がります。

逆に、給料日直前には財布や銀行口座がすっからかんというような方に専業は無理です。そのような人はどこかで(しかも始めて間もない頃に)無謀な取引をしてしまい、投資元本を大きく減らすことに繋がるでしょう。

そのような意味で、投資元本とは全く別のお財布として生活防衛資金を用意しておくのは重要です。いくらあればOKというのは人それぞれですが、いざと言うときにまた働き口を探すまでの期間の繋ぎとして、最低でも半年から1年分の生活費、可能なら5年分くらいは用意しておきたいですね。

つまり、専業トレーダーとして独立するための最低限の準備として、取引のための元手である「投資元本」に加え、貯蓄(しかも貯金)として「生活防衛資金」を用意する必要があるのです。

独立に必要な金額と仕事を辞めるタイミング

タイミング

以上を踏まえて、独立に必要な金額と具体的な仕事を辞めるタイミングを考えてみます。

  1. 必要な投資元本と生活防衛資金の確保
  2. 無駄な支出の見直し
  3. 会社勤めに戻らないという覚悟と準備

1点目はこれまで出てきた話です。これは私の感覚ですが、必要な資金として最低でも投資元本2000万円と2〜3年分の生活資金1000万円で、合計3,000万円は必要です。

しかし、はっきり言って合計3,000万円は専業としてはかなり心許ないです。というか数千万円程度の資金で独立するにはリスクが高すぎます。これは、たとえ稼ぎがゼロであっても税金や社会保険料の支払いがあり、後者の社会保険に含まれる健康保険、国民年金の支払いは年々増えていっています。まして独身でなく家族がいる場合、稼ぎがなくてもガンガンお金が減ります。それらが引かれてなおかつ生活に必要な住居費、水道光熱費、通信費などがかかってきますから、普通の人が想像する2倍以上の早さでお金が減っていきます。そのため、現実的に余裕を持ってリタイアするなら少なくても1億円以上、できれば3億円程度の資金としておきたいところです。

2点目は「おや?」と思われるかもしれませんが重要です。給料という定期的な収入がなくなる以上、これまで以上に支出を見直す必要があります。代表的なものとしてはほとんど使っていないサブスクリプションの費用、高額なクレジットカード年会費、タクシーの利用を避けるあたりがありますかね。自分の稼ぎに見合った支出で生活する準備を進めましょう。

3点目は二度と会社勤めをしないという覚悟と準備です。会社は事業を成す上での組織体ですから、会社を辞めてしまうと大きなプロジェクトに関わる機会や、組織を軸にした人間関係が失われることになるでしょう。独立する以上はそのようなことに目をつぶることになりますが、独立してしまうと人生で二度と携わることがなくなるということで、後悔ないようにすることが重要です。辞めてから気づくこともあるかもしれませんが、会社勤めに対して思い残すことがないようしましょう。

そして、これら3点を準備して、はじめて専業トレーダーになるという決断をしてほしいのです。意思や準備が中途半端ではいけませんし、そもそもここまで用意できないような自己管理能力では専業トレーダーとして生きていくのは不可能ですから、言い方は悪いですが会社に飼われている方が幸せに生きていけるはずです。

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まとめ

会社勤めの方にとって「脱サラ」という言葉は魅力的に聞こえるかもしれません。しかし、その言葉の裏には多くの人が失敗してきたというのもまた事実です。

皆さんには専業トレーダーという生き方をよく理解して頂き、本当に自分に合っているのか自分を見つめ直してみる機会になればと願っております。