高配当株式ETFとして有名な銘柄は、どれを選ぶべきなのか──。
高配当株式ETFといえば、SPYD、HDV、VYMが有名ですが、分配金でインカム収入を狙っている方にとってどれがもっともよいのかは大きな問題です。
この記事では、米国上場の高配当株式ETFについて比較してみます。
分配金利回り:SPYD>HDV>VYM
高配当ETFを選ぶならシンプルに分配金利回りで選ぶという方法があります。利回りの計算にあたっては価格も重要な要素であり、3銘柄を横に並べてみるとその特徴は明らかです。
なお、比較は2021年末(2021年12月31日)時点での情報をもとにしています。
SPYD | HDV | VYM | |
---|---|---|---|
名称 | SPDRポートフォリオ S&P500高配当株式ETF |
iシェアーズ・コア 米国高配当株ETF |
バンガード 米国高配当株式ETF |
運用会社 | State Street | Black Rock | Vanguard |
設定日 | 2015/10/22 | 2011/03/31 | 2006/11/16 |
連動指数 | S&P500高配当指数 | モーニングスター 配当フォーカス指数 |
FTSEハイディビデンド・ イールド指数 |
リバランス | 年2回 | 年4回 | 年1回 |
経費率 | 0.07% | 0.08% | 0.06% |
分配時期 | 3・6・9・12月 | 3・6・9・12月 | 3・6・9・12月 |
年間分配金 | $1.549210 | $3.508022 | $3.096100 |
分配金利回り | 4.70% | 4.00% | 3.38% |
年間騰落率 | 27.66% | 15.19% | 22.51% |
価格(2021年末) | $42.05 | $100.99 | $112.11 |
価格(2020年末) | $32.94 | $87.67 | $91.51 |
この比較から2021年において、分配金利回り・年間騰落率いずれもSPYDが優れることがわかります。
なぜ分配金利回りや年間騰落率に差が出るのか?
先ほどの比較を見ると、同じ高配当株式を組み入れるETFにもかかわらず、なぜこれだけの差が出るのか気になる方も多いでしょう。それは、端的に言えば連動するインデックスが異なるため、組み入れている銘柄やウエイトが異なることに起因します。
もう少し長めの期間で比較してみましょう。3つの中で歴史が浅いSPYDの設定日(2015/10/22)から2021年末までのパフォーマンスは以下の通りです。


グラフはETF価格の変動を示しており、青がSPYD、赤がHDV、黄色がVYMです。やや長めの期間で比較すると、単純な騰落率ではVYMがもっとも上昇しています。2020年3月のコロナショック時の下落を見れば、3つのETFでパフォーマンスに大きな差が出ていることは明らかです。では、これら3つのETFは具体的にどのように異なるのでしょうか?
SPYDではS&P500の中で高配当な銘柄という、全世界の中でも勝ち組である米国のさらに上位銘柄から構成されています。指数を構成する80の銘柄がおよそ均等に含まれていることにより、銘柄分散が効いているという特徴があります。組み入れ銘柄をセクター別に見ると、不動産・一般消費財といったセクターが上位を占めます。過去の実績では、SPYDの設定以来HDV・VYMよりも高い分配金利回りを維持してきました。
一方、HDVは構成する銘柄数こそSPYDとほぼ同じで80銘柄弱から構成されていますが、ウエイトはかなり偏っており上位10銘柄で全体の60%以上を占めています。比率の上位を占めるセクターはエネルギー・通信サービスです。銘柄の採用にあたっては、財務健全性を徹底的に重視している点がポイント。
また、VYMは約400銘柄と銘柄数が比較的多いものの、ウエイトは上位10銘柄で全体の約25%と偏っており、不動産セクターが除外されている特徴があります。比率の上位を占めるセクターは金融・消費財であり、相対的には景気変動の影響を受けにくい傾向があります。
ここまで高配当株式ETFをそれぞれ見てきましたが、必要となる費用はファンドの経費率だけではありません。購入時や売却時にも取引手数料がかかります。最近では多くの証券会社が海外株式や海外ETFを取り扱うようになってきており、手数料で優劣がかなりはっきりするようになってきました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

分配金は市場動向に左右されやすい
保有しているだけで得られるため忘れがちですが、ETFの分配金は市場動向により変化します。分配金は実際に保有している株式の配当を原資としているため、企業が配当を出さないとETF分配金も減ることにつながります。
実際、2020年はコロナショッック後に株価は大きく上昇しましたが、高配当企業も業績の先行きの不透明感から減配や無配になったことで、高配当ETFの分配金に影響がありました。
そのような環境下、SPYDは分配金が減少した一方、HDVとVYMでは分配金が前年(2019年)よりも増加するなど、銘柄により明暗が分かれました。現在はSPYDに優位性があるものの、今後の動向次第ではHDVやVYMが優れている場面が出てくる可能性も十分にありえます。
このように、いかに分配金目的で安定重視の投資と言えども、将来は誰にもわからないというのが投資の醍醐味といえるでしょう。