S&P500への投資はVOO・eMAXIS Slim・2558のどれがよいのか?

株式・債券

S&P500への投資といえば、米国株投資の最初の一歩としてはあまりにも有名です。

実は、S&P500へ投資するといっても様々な方法があり、何も考えずに投資しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ここでは様々なS&P500インデックスに連動するファンドについて比較し、どれを選ぶべきなのか考えてみます。SBI・V・S&P500インデックス・ファンドとの比較も見ていきましょう。

今回改めて比較してみたことで私も初めて知ったこともあり、きっと新たな発見があると思いますので、ぜひ最後までお読みくださいね。

S&P500への投資は米国株投資の基本

まず、S&P500への投資について改めて復習してみましょう。

S&P500インデックスに連動するリターンを得られるファンドに投資することで、S&P500のリターンに連動する投資効果を目指すもの

正確に言うと、S&P500とは株価指数(インデックス)のことであり、S&P500を購入するなどの方法で直接投資することはできません。代わりにS&P500指数のリターンに連動するファンドへ投資することで、S&P500と同等の投資リターンを得るというのが、いわゆる「S&P500に投資する」と言われるものですね。

S&P500は米国を代表する大型・中型の約500銘柄から構成されるのですが、米国全体の上場株式時価総額のおよそ80%を占めており、S&P500の株価指数の動きは米国全体の株式のリターンとほぼ一致するため、実際にはS&P500へ投資するということは米国全体に投資するのとほぼ同じことを意味しています。

SP500チャート
S&P500チャート

一般的に米国株は世界中の他の国の株式マーケットと比べて成長が著しく、GAFAMに代表される世界の大企業が上場していることから、投資対象として人気が非常に高いです。正直、米国株の上昇を見てしまうと圧倒されてしまい、日本株へ長期投資することに疑問を感じてしまうほどです。

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ここからは実際の投資する方法について見ていきましょう。

S&P500へ投資する方法は大きく分けて3つある

S&P500へ投資するのであれば、大きく3つの方法があります。

その3つとは、投資信託を使った方法、国内ETFを使った方法、米国ETFを使った方法です。

それぞれ多くの運用会社がS&P500に連動する商品を出しているのですが、その中でも投資する価値のある銘柄は、投資信託であればeMAXIS Slim、国内ETFであればMAXIS 米国株式(S&P500)(コードは2558)、米国ETFであればVanguard 500 Index Fund ETF(TickerコードはVOO)が選ばれるでしょう。

詳しくはご自分で調べていただいてもよいのですが、ここでは割愛します。例えば、国内ETFとして東証に上場しているもののリストはこちらにあるので、もしご興味があれば比較してみてください。

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「ETFって上場投資信託のことなんだから、投資信託と同じなのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実は非常に重要な違いがあります。その違いとは、①ETFはマーケットが開いている時間にリアルタイムで取引できる、②上場しているので売買手数料が原則かかる、③ETFでは分配金を再投資するには原則自分で行う必要がある、という点です。後ほどまた出てきますが、③の分配金については特に長期投資を行う上で重要な違いであり、分配金を受け取る時の税金などもポイントになります。

先ほど紹介した3銘柄について具体的に比較していきましょう。

eMAXIS Slim
米国株式(S&P500)
MAXIS 米国株式
(S&P500)
Vanguard 500
Index Fund ETF
運用会社 三菱UFJ国際投信 三菱UFJ国際投信 Vanguard
区分 投資信託 ETF(上場投資信託) ETF(上場投資信託)
上場の有無 非上場 上場
(東証、2558)
上場
(NYSE Arca、VOO)
設定日 2018/07/03 2020/01/08 2010/09/09
信託報酬 0.0968%以内(税込) 0.0858%以内(税込) 0.03%(※経費率)
その他費用 詳細は非開示 上場料0.00825%、
指数利用料0.05% など
詳細は非開示
分配時期 4月(※分配実績なし) 6・12月 3・6・9・12月
NISA ○(※10%の現地課税あり)
つみたてNISA × ×
iDeCo × ×

色々違う点をまとめてみましたが、みなさんが気になるのは、ファンドに支払う報酬・売買手数料・税金のいわゆるコストでしょう。これはしっかり比較してみると結構複雑です。

まず、投資信託であるeMAXIS Slimは一番シンプルです。買付や売却に売買手数料はかかりません。これまで分配金を出した実績がなく、ファンド内で勝手に再投資されますので、税金がかかるのは売却で利益が出た時のみです。NISA・つみたてNISA・iDeCoの全てに対応しており、税金はかかりません。

次に、国内ETFである2558です。上場しているため、買付や売却のときに売買手数料がかかります。定期的(年2回)に分配金を出しており、分配金には必ず課税されます。また、売却時の利益に対しても課税されます。ただし、NISA口座で保有している分については分配金・売却時に税金はかかりません。

証券会社によってはNISA口座で保有する場合には売買手数料がかからないというサービスがある証券会社もあります。

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そして、米国ETFであるVOOです。証券会社によるのですが、売買手数料や米ドルで買い付けるための為替手数料がかかります。定期的(年4回)に分配金を出しており、分配金には必ず課税されます。また、売却時の利益に対しても課税されます。NISA口座で保有している場合、国内で課税はされませんが現地分として10%課税されます。非NISA口座では米国と日本で合わせて20.315%課税されます。

こちらは、買付時の売買手数料が無料というサービスがある証券会社もあります。

ぶっちゃけ複雑すぎるので、シンプルに考えよう

ここまで見てわかるように、どのようなケースを考えるかによってそれぞれコストが変わってくるので、真面目に細かく考えると非常に複雑です。

ただ、その影響でいえば、もっともシンプルなeMAXIS Slimの信託報酬とVOOの経費率では年間0.0668%の差が出ます。もし100万円投資していれば、その差額は668円、これをどう感じるかは人それぞれですが、少なくても他の投資商品のコストと比べればかなり低い水準です。

ここで紹介したファンドはどれもコストが非常に低い優良商品ですから、できるだけシンプルに考えてみるようにしましょう。

まず、多くの人にはVOOをおすすめできません。ファンドのコストである経費率はぶっちぎりで低いですが、為替手数料や売買手数料が必要で、海外ETFでは二重課税を防ぐために確定申告手続きが必要など、手間がかかるのです。もし、米国株に積極的に投資しているなど、外貨として米ドルをたくさん持っているのであればVOOを選んでもよいでしょう。

そうなると、多くの人にとって有利なのはeMAXIS Slimです。売買手数料がかからず、分配金がファンドの中で再投資され、もし分配金支払いが発生したとしても証券会社で自動的に再投資するよう設定できるため、もっとも手間がかかりません。

逆に、あえて2558を選ぶべき理由としては、分配金をインカムゲインとして手元に残したいという場合です。NISA口座で買い付ければ分配金へ課税されませんから、生活資金に回すなり、別の個別株の投資に使うなり、その使い道は自由です。

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なぜSBI・V・S&P500インデックス・ファンドではなく、eMAXIS Slimを選ぶべきなのか?

2019年にS&P500インデックスに連動する投資信託として、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドが登場しました。このファンドは実質的な信託報酬が年0.0938%(実質的な投資先であるVOOの分を含む)と、eMAXIS Slimよりも一見すると低コストです。

しかし、私はそれでもeMAXIS Slimの方が優れると考えます。それはなぜでしょう?

SBI・V・S&P500インデックス・ファンドでは、直接米国株式へ投資しているのではなく、米国ETFであるVOOを通して米国株式へ投資するファンド・オブ・ファンズの形式をとっています。この場合、VOOからの分配金は現地で課税された上で、SBI・V・S&P500の中で再投資されるため、再投資効率が低下します。

VOOの分配金利回りを年1.5%程度とすれば、米国での課税は10%ですから、およそ0.15%が見えない課税分のコストとして毎年かかることになります。この見えない課税コストは信託報酬よりも高いですから、影響はそれなりに大きいはずです。

そのため、投資信託でS&P500連動のファンドを選ぶのであれば、SBI・V・S&P500よりもeMAXIS Slimの方が優れると考えられます。

まとめ

資産形成

これまでの比較から結果をまとめてみます。結果はシンプルです。

・米国の個別銘柄にも投資しており、色々な手間がかかってもよいという方 → VOOがおすすめ!

・あまり手間をかけず分配金を自由に使いたいという方 → 2558がおすすめ!

・上記に該当しない方(ほとんどの方はこちらでOK!) → eMAXIS Slimがおすすめ!

このように、同じS&P500に連動する投資成果を狙うといっても、同じような商品に見えて少しずつ結果が異なるというのが投資における方法選びの醍醐味といえるでしょう。皆さまには投資商品について理解していただき、投資に生かすことで少しでも豊かな生活を送ることのお役に立てればと願っております。