スマートベータは優れた投資戦略なのか?使えるETFを比較・紹介! [投資信託はイマイチ?]

株式・債券

「ファクターへ投資するスマートベータってどうなんですか?」

株式投資の運用手法として、インデックス運用やアクティブ運用と並び「スマートベータ」が登場してから、公的年金でも採用されるようになったことで有名となりました。

スマートベータはアクティブ運用と同様に、市場平均を上回るリターンを期待できる点から注目されるようになった運用方法です。

この記事では、スマートベータとはどのような運用方法であるかの解説とともに、実際の投資手法について紹介します。

スマートベータの概要

スマートベータとは?

スマートベータとは、もし市場全体に投資するよりも「賢い指数」を生み出すことができれば、それに追随するポートフォリオを組むことで市場全体より良い投資成績が出るのではないか?という考えに基づき作られた運用方法です。

そもそも、個別銘柄またはポートフォリオ全体のリターンは、市場全体との連動しやすさ(相関)を示すベータ(β)の要因と、それ以外の要因としてアルファ(α)に分解することができます。ベータが1であれば市場平均との連動となります。

もしアルファの源泉を発見できれば、その因子を組み込んだインデックス(指数)を新しく作ることができます。このインデックスを用いれば市場平均値である「ベータ」よりも「スマートに(賢く)」投資できますね、というのが「スマートベータ」戦略です。

一般的に、スマートベータは「インデックス運用(パッシブ運用)」と「アクティブ運用」の中間と言われており、それは以下のような比較をしてみると明らかになります。

スマートベータとインデックス運用との比較

スマートベータとインデックス運用は特定のインデックスへの連動を目指すという意味において共通の考え方です。

インデックス運用では、追随する対象はマーケット全体を表すインデックスです。

一方、スマートベータでは、「財務指標」や「配当」などマーケット全体より優れるであろう特定要素(これを「ファクター」と呼びます)に基づき構成されたインデックスへの追随を目指します。

インデックス運用は市場全体へ投資するため、特定銘柄のリサーチなどの手間がかからない分だけ、低コストです。スマートベータは、追随するインデックスの中身と同じポートフォリオを組むためリサートはありませんが、追随すべきインデックスを作成する部分に手間がかかるため、インデックス運用よりはコストが高くなります。インデックスの作成は定量的な分析をベースに行われるため、一般的には個別銘柄のリサーチほどの手間はかかりません。

スマートベータとアクティブ運用との比較

スマートベータとアクティブ運用はマーケット全体以上のパフォーマンス(プラスの超過収益)を目指すという意味において共通の考え方です。

アクティブ運用では、アナリストやファンドマネージャーと呼ばれる投資の専門家の分析や判断に基づき運用が行われます。

一方、スマートベータでは、調査や分析はマーケットを上回るリターンの源泉となるファクターの特定のために行っており、アウトパフォームを目指します。

アクティブ運用は専門家による調査・分析に加え、選定した投資銘柄の入れ替えのための売買など運用にあたってはどうしてもコストが高くなります。一方、スマートベータは、マーケット超過要因としてのファクターは一度特定しさえすれば、あとはルールベースでインデックスを算出するため、継続的な調査・分析の手間がかからない分だけ、アクティブ運用よりもコストが低くなります。また、アクティブ運用に比べればファクター追随のための銘柄入れ替え自体が一般的に少ないと言えるでしょう。

スマートベータが採用されるようになった理由

スマートベータが採用されるようになった大きな理由、それは「アクティブ運用のファンドがコストに見合うような高いリターンを得られていない」点にあります。アクティブファンドと言っても長期的にベンチマークをアウトパフォームし続ける事は難しく、ある期間においては勝っていても別の期間では大きく負けてしまいトータル長期間では結局負け、となるのがざらなのがこの業界です。そのため、公的年金・機関投資家だけでなく個人投資家においても手数料の低いインデックスファンドへの資金流入が加速しています。

このような状況下で、「手数料を抑えつつ、ある程度の安定した超過リターンを獲得したい」という中間的なニーズの受け皿としてスマートベータに注目度が高まり、これに追随する投資手法が機関投資家の間で広がったという背景があります。

スマートベータで採用されるファクター

ファクター

マーケット(市場インデックス)をアウトパフォームするとされているファクターには様々な切り口があるのですが、ここでは学術的に認められている6つのファクターを挙げておきましょう。

ファクター 高リターンの説明 指標・構成方法
高配当 高配当 配当利回り、配当性向、配当持続性など
(長期間の傾向で見る)
バリュー 割安銘柄 P/B(株価純資産倍率)、Forward P/E(予想株価収益率)、
EV/CFO(企業価値営業キャッシュフロー比率)
クオリティ 健全な財務体質 D/E(負債自己資本比率)、ROE(自己資本利益率)、
Earnings Variability(利益安定性)
サイズ 小型株 企業の時価総額が低い
(小型ほどマーケット全体よりも大きく動く)
モメンタム 株価が上昇基調 過去の特定期間内での株価収益率
(6ヶ月〜12ヶ月程度で見るのが一般的)
低リスク 低いボラティリティ 個別銘柄のボラティリティから最適化
(銘柄間の分散を考慮する・しないの両方がある)

ここで挙げた切り口の他にも、インデックス算出で有名なMSCI(Morgan Stanley Capital International)社はファクターの切り口をFaCSとして以下の8つに分類を定義しているなど、諸説あります。>> MSCI FaCSについてはこちらから。

  • バリュー
  • サイズ
  • モメンタム
  • クオリティ
  • 配当利回り
  • ボラティリティ
  • グロース
  • 流動性

最近では、これらに加えて、ESG(環境・社会・ガバナンス)が市場をアウトパフォームするファクターではないかと分析・検証されていますが、今のところ明確な優位性があると断言できないようです。この原因としては、そもそもESGに優れる会社が大企業だったり、成長産業というよりは成熟産業であったり、財務的に優良な企業であるなど、既存のファクターで説明できてしまうからだと私は考えています。(ESGへの投資自体を否定するものではありません。念のため。)

知ってるようで知らないESG投資の問題点〜ESG投資をあえて否定してみる
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ETFか投資信託か?

ファクターを意識した投資は個人の力量次第では可能なのですが、スマートベータ運用となるとインデックスへの追随は個人では難しいため、投資商品を活用するのが良いです。

基本的にそのような運用手法をとる投資商品は、大きく「投資信託」か「ETF」があります。他にも探せばあるのですが、コストがべらぼうに高かったり、インデックスへの追随が疑わしかったり、そもそも運用自体の正統性が示せないなど問題点が多く存在します。

以下の理由から、私のお勧めはETFを使ったスマートベータ運用です。

  • スマートベータで運用する投資信託が充実していない
  • そもそもその投資信託がスマートベータか判断しにくい
  • コスト面・アクセスしやすさで海外運用会社のETFが優れる

結局、スマートベータの運用については日本と比べて海外の方がファクター分析・商品開発が進んでいるため、海外ETFがもっとも良い投資手法だと考えています。ただし日本株対象の商品であれば、国内ETFを使うのがよいでしょう。

スマートベータ運用のETF

分析と検討

高配当

1494:One ETF 高配当日本株

S&PとJPXが共同で算出する「S&P/JPX 配当貴族指数」への連動を目指す商品であり、日本株の高配当利回り銘柄を投資対象としています。運用会社はアセットマネジメントOne、経費率は0.31%(税込)。

1478:iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF

MSCIが算出する「MSCI ジャパン 高配当利回り インデックス」への連動を目指す商品であり、日本株の高配当利回り銘柄を投資対象としています。運用会社はBlack Rock、経費率は0.209%(税込)。

高配当株ファンドはインカム収入を好む日本人に人気です。日本株へこだわりがあるならよいですが、投資対象としては米国ETFのSPYD、HDV、VYMの方が優れているとは思います。

[米国高配当株ETF]SPYD, HDV, VYMは何が違う?[インカムの魅力]
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バリュー

VTV:iバンガード・バリュー ETF

CRSPが算出する「CRSP・米国大型バリュー・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はVanguard、経費率は0.04%。

IWVL:iシェアーズ・エッジ MSCI ワールド・バリュー・ファクター UCITS ETF

MSCIが算出する「MSCI エンハンスト・バリュー・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.30%。

IUSV:iシェアーズ・コア S&P米国バリュー ETF

MSCIが算出する「S&P 900 バリュー・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.04%。先進国のバリュー銘柄が投資対象です。

最近では、2020〜2021年の大きなマーケット上昇がグロース相場だったため、バリューファクターを重視する当ファンドのリターンはかなり低めに出ています。

クオリティ

QUAL:iシェアーズ MSCI 米国・クオリティ・ファクター ETF

MSCIが算出する「MSCI 米国・クオリティ・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.15%。

IWQU:iシェアーズ・エッジ MSCI ワールド・クオリティ・ファクター UCITS ETF

MSCIが算出する「MSCI ワールド・セクター・ニュートラル・クオリティ・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.30%。先進国の高格付企業の銘柄を投資対象としており、業種の偏りを補正しています。

サイズ

IWM:iシェアーズ ラッセル 2000 ETF

FTSEが算出する「Russell 2000 インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.19%。米国の小型株を投資対象としています。

SCHC:シュワブ・インターナショナル小型株ETF

FTSEが算出する「FTSE 先進国小型(米国除く)リキッド・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はSchwab、経費率は0.11%。米国以外の先進国の小型株を投資対象としています。

モメンタム

MTUM:iシェアーズ・MSCI・米国・モメンタム・ファクター ETF

MSCIが算出する「MSCI 米国・モメンタム・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.15%。米国の大型・中型株の高価格モメンタム銘柄を投資対象としています。

IWMO:iシェアーズ・エッジ MSCI ワールド・モメンタム・ファクター UCITS ETF

MSCIが算出する「MSCI ワールド・モメンタム・インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.30%。先進国の高価格モメンタム銘柄を投資対象としています。

低リスク

USMV:iシェアーズ MSCI 米国 ミニマム・ボラティリティー・ファクター ETF

MSCIが算出する「MSCI 米国 最小分散インデックス」への連動を目指す商品。運用会社はBlack Rock、経費率は0.15%。

一般的に最小分散はマーケットが下落しているときにマーケットをアウトパフォームしやすいため、2020〜2021年の大きなマーケット上昇の中では、リターンはかなり低めに出ているということで、最近は人気が落ちています。

スマートベータETFへ投資するには?

賢く投資する

スマートベータ運用のETFの取引を行うためには、証券会社で口座を開設する必要があります。

実は、ETFへの投資において必要となる費用はファンドの経費率だけではありません。購入時や売却時にも取引手数料がかかります。最近では多くの証券会社が海外株式や海外ETFを取り扱うようになってきており、手数料で優劣がかなりはっきりするようになってきました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

[まとめ]米国株・米国ETFを買うならどの証券会社が一番お得なのか?
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まとめ

この記事ではスマートベータの概要やその特徴、そして実際に投資するための方法を紹介しました。

投資する上で何を重視するかは人により異なります。その中でもスマートベータは特定の好みに寄り添う運用をしていることから、こういう運用をしたいというニーズに応えられる投資商品であると言えると思います。みなさまには様々な運用手法について理解いただき、少しでも資産形成のお役に立てれば幸いです。