ロボアドバイザーからみるアセットアロケーション〜どのように資産配分戦略を考えるべきか?

マネー論

最初に書いておくと「このロボアドバイザーがおすすめ!このリンクから口座開設してね!」という記事ではないです。ロボアドバイザーからアセットアロケーション(投資資産のうち株式が何%、債券が何%に投資する、という考え方)について真面目に考えてみる記事です。

主要なロボアドの比較

それなりに理論や実績が伴っていると判断できるロボアドについて、片っ端から調査しました。

WealthNavi(ウェルスナビ)

項目 内容
特徴 平均分散法による資産配分、DeTAX(自動税金最適化)
投資対象 米国株、先進国株米国除く、新興国株、米国債券総合、米国物価連動国債、金、不動産
ペーパー WealthNaviの資産運用アルゴリズム

ざっくり比較した感じ、比較の基準となるロボアド。効率的フロンティア上にある資産配分比率のうち、投資家のリスク許容度を5段階に分け、リスク許容度に合った比率を選択します。

資産クラスのリスクリターンは1年ごと3月末で更新される模様。リスクは直近分の価格変動のウエイトが高くなるよう算出しており、期待リターン算出にBlack-Littermanモデルを使用している。

極端に偏った資産配分とならないよう、米国株は上限40%、金・不動産は上限10%、他が35%とキャップがあります。同様にフロア比率も存在します。

株式のうち米国株を分けていることからも分かる通り、ドル建てでの資産形成をベースとした思想であり、為替ヘッジは対ドル・対円ともに行われません。

自動リバランス対応。支払う税金を減らすためのDeTAX機能はあったら嬉しいおまけ程度でしょう。

ウェルスナビはやめておくべき?失敗、デメリットは?驚きの運用成績をブログで徹底解説してみた!
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THEO(テオ)

項目 内容
特徴 スマートベータ採用
投資対象 各国の株式ETF19種、債券ETF12種、コモディティ8種
ペーパー THEOの特徴

なんか色々なパターンを実現できるロボアド。ポートフォリオの資産をグロース、インカム、インフレヘッジの機能に分けて運用する。年齢、金融資産等に応じて(これってリスク許容度のことだよね?)、231通りのポートフォリオが用意されている。ほんまかいな。

ただし、そのアルゴリズムは詳細までは公開されていない模様。大学教員やブラックロック出身者が監修している、ことになっています。(個人的にはこの手の肩書きをあまり信じていない)

スマートベータを採用していると銘打っているだけあって、株式ETFはバリュー/グロースの銘柄に加え、サイズ別のETF銘柄へ投資しています。おそらく、クオンツ的な詳細なファクター分析まではしておらず、各ETF銘柄のリスクリターンを使った単純な分散平均法でしょう。

債券も米国の年限別だけでなく、米国外債券やモーゲージ、シニアローン、ハイイールド社債を投資対象にしている点は興味深いです。

株式の投資対象であるETFをESG銘柄に絞った「THEOグリーン」モードを選べることや、マイル/ポイントがたまるor銀行/証券会社と連携した「THEO+」(テオプラス)というサービスはおまけ。ちなみに自分はESG懐疑論者です。

Folio(フォリオ)

項目 内容
特徴 分散平均法
投資対象 米国株、先進国株米国除く、新興国株、米国債券総合、新興国債、ハイイールド債、金、不動産
ペーパー ホワイトペーパー

WealthNaviやTHEOと比べるとマイナー感は否めないものの、実はSBIグループの連結子会社。

FOLIOがわかりにくいのはいくつかの投資サービスの複合である点にあり、ロボアド関連では「おまかせ投資」「FOLIO ROBO PRO」が該当します。

「おまかせ投資」の戦略はWealthNaviに近い。期待リターンの推定にBlack-Littermanモデルを使っている点や、各資産クラスのウエイトのキャップ設定もWealthNaviに近い。リスクリターンの見直しも同じように1年に1回だろう。違いとして、投資対象となる債券において、より利回りを重視しリスクをとった投資商品を選定しています。

「FOLIO ROBO PRO」はおまかせ投資の戦略に加えて、AIを活用しています。(統計解析になんでもAIとつけるのはやめてほしい)

どう活用しているかというと、世界各国の株式や債券、通貨や銅や原油など、相場を先読みするマーケットデータを分析し、機動的な資産配分を行なっています。宣伝をそのまま真面目に受け取ると、2020年3月のコロナショックはこの機能的な資産配分で一時的に安定資産である債券の比率を高め、その後すぐにリスク資産の比率をあげることで、パフォーマンスに寄与したとのこと。

クオンタメンタル的な解析に基づくシグナルで判断しているのか?など詳細はわかりません。とはいえ、ロボアドにありがちな1年間を固定の資産配分比率が維持されるのに比べれば柔軟で画期的な機能だと思うし、機動的に資産配分変更を行う上で参考になる点がありそうです。

ただしファンドの機動的な資産配分変更というのはあまり機能していないイメージがあり、この点についてはまたどこかで解説してみます。

Wealth Wing

項目 内容
特徴 日本株のアクティブ運用
投資対象 日本株の個別銘柄
ペーパー 戦略詳細

複数の資産クラスへ投資するわけでなく、日本株の個別銘柄に投資するロボアドのため、詳細は割愛。対TOPIXを上回るパフォーマンスを目指す。定量分析ベースのようだが、どのファクターを重視するかなど詳細は不明。市場下落局面への対応として、自動ヘッジ機能があるとのこと。

一任口座では単元株数の関係で投資制約にかかりやすく、なんちゃってAIファンド投資信託の劣化版では?と危惧しています。

SUSTEN(サステン)

項目 内容
特徴 自社運用の3つの投資信託に対して投資比率をロボアドが決める
投資対象 株式(先進国株、新興国株)、債券(国債、社債)およびARP戦略
ペーパー 運用の仕組み

自社運用の3つの投資信託へ分散投資する。この投資信託にかかる報酬は受託会社(信託銀行)に支払う分のみであり、委託会社や販売会社への報酬はない。そのため、運用会社に支払う報酬は、公式ページでも掲げられている通り、成功報酬のみである。調べていてはじめて聞いた会社。

3ファンドの比率を変えるだけでなく、ファンド内でもリバランスが行われる。特にオルタナティブリスクプレミア(ARP)は先物ロングショートを組み合わせた投資であり、個人では投資が難しいリスクプレミアムの獲得を目指す戦略となっています。

対円で為替ヘッジされている。

まとめ

そもそもドルコスト平均によるインデックス積立のような100%株価指数に連動する投資でなく、複数の資産クラスへの分散投資を選ぶ動機としては、「既にある程度の資産はあるが、株式市場のリスクの100%が投資資産に影響するような投資を受け入れにくい」という点が1番でしょう。

ロボアドにあるような「難しい市場判断をせずに、効率的に資産配分をして投資する」というのは現実的な選択肢であるし、私自身も資産の一部は複数の資産クラスを対象として分散投資戦略に基づいて行なっています。

ロボアドではほとんどの場合、預け入れ残高の0.5%〜という手数料が毎年かかるし、正直あまりおすすめできない(もちろん、一任口座の中で銘柄の購入売却を行うにも取引手数料がかかる)。その投資戦略自体は優秀であるため、ロボアドのサービスに頼らず真似をしてみるというのは有力な選択肢でしょう。