「QYLD」という海外ETFをご存知でしょうか?
QYLDは数ある高配当ETFを超えて最強となる実力を秘めているにもかかわらず、あまり広くは知られていない銘柄です。
「高配当ETFと言えばSPYDとかVYMでしょ?」と思っている方は、もしかすると大きな機会損失となっているかもしれません。その高い配当利回りから想像しにくのですが、価格が安定しており、初心者でも手を出しやすい銘柄となっているのです。
この記事では、近年驚愕の分配金利回りを叩き出したQYLDというETFについて紹介してみます。
QYLDとは?
まず、QYLDという海外ETFの特徴を端的に説明しておきましょう。
NASDAQ100指数とは、米国NASDAQ(ナスダック)市場を代表する企業(金融除く)で構成される株価指数であり、GAFAMをはじめ、今なお成長し続ける大企業が大きなウエイトを占めています。
2020〜2021年には、世界中の金融緩和により過去最高の成長を見せており、チャートを見るだけでもその躍進が驚異的であることがわかります。

2020年3月のコロナショック時には指数値が一時7,000を割り込みましたが、2020年末には12,888.28、2021年末には16320.08とたった2年弱で倍以上に上昇しています。
もし、このNASDAQ100指数の値上がりを分配金として受け取ることができたら...?なんとなく、QYLDというETFの魅力を感じていただけましたでしょうか?
ここからはQYLDについて詳しく見ていきます。
QYLDの特徴
QYLDについて、他の高配当と言われるETFと比較しながら特徴を見てみましょう。比較対象として、高配当株ETFとして有名なVYM、優先株ETFの代表であるPFFと並べてみます。
なお、比較は2021年末(2021年12月31日)時点までの情報をもとにしています。
QYLD | VYM | PFF | |
---|---|---|---|
名称 | グローバルX NASDAQ100 カバード・コールETF |
バンガード 米国高配当株式ETF |
iシェアーズ 優先株式 & インカム証券 ETF |
運用会社 | Global X | Vanguard | Black Rock |
設定日 | 2013/12/11 | 2006/11/16 | 2007/03/26 |
経費率 | 0.60% | 0.06% | 0.46% |
分配時期 | 毎月 | 3・6・9・12月 | 毎月 |
他の高分配ETFと比較すると、QYLDはコストである経費率が高く、分配金を毎月受け取れるという特徴があります。
もっとも大事なのが、実際の分配金です。QYLDが2013年の年末にファンドが設定されているため、2014年から比較してみましょう。QYLD・VYM・PFFの分配金利回りをそれぞれ表にしてみました。

青で示したQYLDの分配金利回りは、利回りが安定している赤のVYMやオレンジのPFFと比べて圧倒的に高いことがわかります。それぞれのETFは価格も変動しているのですが、それでもQYLDは年初価格ベースで毎年8%〜11%の分配金を維持しており、過去の分配金実績からはVYMやPFFといった有名な高配当ETFと比べても非常に高い水準です。
ETF価格、つまりプライスリターン(分配金を考慮しない騰落率)のグラフも一緒に紹介しておきましょう。

ETF価格の変動自体は三者三様で年により異なっていますが、すごく極端な傾向があるというわけでもなく、このあたりは価格が安定している高配当ETFの特徴といったところでしょうか。
価格変動自体がそれほど気にならないとはいえ、マーケット混乱時にどれだけ価格が下落するのかはチェックしておきたいところです。

この表の"Worst Year"や"Max. Drawdown"を見れば分かる通り、QYLDは、VYMやPFFと比べてマーケット混乱時の下落幅が小さいです。この点は長期保有という観点で重要であり、下落時の価格変動が小さいということは価格が安定しているということであり、安心して投資を続けられることに繋がります。
相対的に安定しているとは言っても、まったく価格が下がらないというわけではありません。実際、2022年初の米国利上げに伴うマーケット下落時には、QYLDの価格もそれなりに下落しています。
このときにはグロース株が集中的に売られたため、むしろバリューよりなVYMあるいは利回りの高いPFFの方が相対的に下落幅は低かったのですが、個人的にはQYLDの価格が下落したことで買い集めやすくなったと感じています。
このように下落時の価格変化や高い利回りをどのように捉えるのか、というのが投資するにあたって重要となるポイントですね。
なぜQYLDではNASDAQ100の上昇分を分配できるのか?
ここまでQYLDは他の高配当ETFと比較し、分配金が高く、価格が安定しており、独自の魅力があることがわかりました。
それにしても、このQYLDというETFはなぜこれほどの高い分配金を出すことができるか、気になった方もいるのではないでしょうか?
それは、QYLDの名前にもついている「カバードコール」という投資戦略をとっているからです。
カバードコールでは、原資産(ここではNASDAQ100指数)の買いとコールオプションの売りにより行われます。

この戦略では、コールオプションの売りにより、保有する資産の権利行使価格を超える分の値上がり益を放棄する代わりに、オプションプレミアムを獲得することができます。このコールオプションのプレミアムこそが分配金の主な原資となるのです。
この分配金の金額には実は裏があります。Global Xから出ている"Global X Covered Call ETF Tax Primer"というドキュメントに記載がある通り、QYLDに関していえば、NASDAQ100のコールオプションのプレミアムの半分を、NAVの1%を上限として毎月分配するという方針となっています。
For example, for QYLD, the fund expects to distribute on a monthly basis one-half of the premiums received by writing calls on the Nasdaq 100, capped at 1% of the Fund’s net asset value (NAV).
Global X Covered Call ETF Tax Primerより
これを言い換えれば、QYLDにおいて1ヶ月の分配金の上限は分配基準日の価格の1%までということですね。
カバードコール戦略はオプションを使っているという特性上、ボラティリティが高い時期においてプレミアムが上げることでより高い利回りを生み出すことができ、情報技術セクターをはじめ値動きの大きいグロース株が多く組み入れられているNASDAQ100という株価指数の性質と非常にマッチした戦略であると言えます。
まとめ
ここまでQYLDのメリットやその商品の特徴について紹介してきました。
QYLDは、とにかく分配金を多く狙いたい、配当金が毎月欲しい、VYMやPFFよりも安定感があり高配当な銘柄を探しているという方にとって魅力的な商品です。
このように、高配当・高分配のETFといっても、同じような商品に見えて少しずつ結果が異なるというのが投資における銘柄選びの醍醐味といえるでしょう。皆さまには投資に役立つETF銘柄について理解していただき、投資に生かすことで少しでも豊かな生活を送ることのお役に立てればと願っております。