[優先株ETF]PFF, PGX, PFFD, PGFは何が違う?[ハイブリッド証券]

株式・債券

優先株ETFとして有名な銘柄は、どれを選ぶべきなのか──。

高配当株ETFと並び、インカム投資を行う上で優先株ETFは根強い人気があります。その中でも似たようなETFにもかかわらず、これらのパフォーマンス特性は異なるため、どれを選ぶのかは悩みどころ。

この記事では、優先証券に投資するインデックス型のETFについて比較してみます。

分配金利回り:PFFD>PGX>PGF>PFF

積み立て投資を目的にETFを選ぶためにはいくつかの観点が考えらます。シャープレシオや分配金再投資リターンなど様々な指標がありますが、ETFを選ぶならシンプルに分配金利回りで選ぶという方法があります。利回りの計算にあたっては価格も重要な要素であり、4銘柄を横に並べてみるとその特徴は明らかです。

なお、比較は2021年末(2021年12月31日)時点での情報をもとにしています。

PFF PGX PFFD PGF
名称 iシェアーズ
優先株式 &
インカム証券 ETF
インベスコ
プリファード
ETF
グローバルX
米国優先証券
ETF
インベスコ
ファイナンシャル
プリファード ETF
運用会社 Black Rock Invesco Global X Invesco
設定日 2007/03/26 2008/01/31 2017/09/11 2006/12/01
連動指数 ICE
上場優先株式 &
ハイブリッド証券
インデックス
ICE BofAML
Core Plus Fixed
Rate Preferred
Securities Index
ICE BofAML
Diversified Core
U.S.Preferred
Securities Index
ICE Exchange-Listed
Fixed Rate
Financial Preferred
Securities Index
経費率 0.46% 0.52% 0.23% 0.55%
分配時期 毎月 毎月 毎月 毎月
年間分配金 $1.755537 $0.723560 $1.308000 $0.881110
分配金利回り 4.56% 4.74% 5.07% 4.59%
年間騰落率 2.39% -1.70% -0.16% -2.03%
価格(2021年末) $39.43 $15.00 $25.76 $18.82
価格(2020年末) $38.51 $15.26 $25.80 $19.21
標準偏差(年) 9.95% 8.58% 8.92% 7.33%
シャープレシオ(年) 0.50 0.50 0.58 0.55

この比較から2021年において、分配金利回りではPFFD>PGX>PGF>PFF、騰落率ではPFF>PFFD>PGX>PGFであることがわかります。

なぜ分配金利回りや年間騰落率に差が出るのか?

先ほどの比較を見ると、同じように優先株へ投資するETFにもかかわらず、なぜこれだけの差が出るのか気になる方も多いでしょう。それは、端的に言えば連動するインデックスが異なるため、組み入れている銘柄やウエイトが異なることに起因します。

もう少し長めの期間で比較してみましょう。4ファンド(PFF、PGX、PFFD、PGF)を比較します。これの中で歴史が浅いPFFDの設定日(2017/09/11)から2021年末までのパフォーマンスは以下の通りです。

優先株ETFパフォーマンス
優先株ETFチャート
Portfolio Visualizerにより筆者が独自に作成

グラフはETF価格の変動を示しており、青がPFF、赤がPGX、黄色がPFFD、緑がPGFです。少しわかりにくいですが、赤のPGXと緑のPGFは比較的重なっており、それより上に青のPFFが、さらに上に黄色のPFFDが位置しています。つまり、長い期間で比較すると、単純な騰落率ではPFFDがもっとも上昇し、PGXやPGFは上昇率が低いことになります。2020年3月のコロナショック時の下落を見ると、4つのETFはいずれも大きく下落し、それ以降の上昇が顕著です。

それぞれのETFの特徴を順に見ていきましょう。

PFF

PFFが連動する指数は、ICE 上場優先株式 & ハイブリッド証券インデックスであり、米国に上場する米ドル建ての優先株式およびハイブリッド証券へ投資するファンドです。

優先株式・ハイブリッド証券を投資対象としており、6割以上が金融セクターを占め、次いで資本財・サービス、公益事業のセクターという構成であり、これらで大半のウエイトを占めています。他の優先株式・ハイブリッド証券へ投資するファンドと比べてベータ(株式市場全体との連動度合い)が高い特徴があります。

ハイブリッド証券とは...
ハイブリッド証券とは、債券・株式の性質を併せ持つ証券のことです。ハイブリッド証券は大きく劣後債と優先証券に分けられ、一般的には優先株式もハイブリッド証券のひとつとされています。ハイブリッド証券は、債券より債務弁済順位が低いために債券より利回りが高く、議決権がない代わりに普通株よりも配当順位が高く配当金が高くなるという特徴があります。この記事ではハイブリッド証券を組み入れる4つのETFを比較していきます。

経費率は0.46%であり、インデックス型の海外ETFにしては高い部類に入ります。PFFは優先株ETFの中で最も有名な銘柄であり、比較の基準になる銘柄と言えます。

PGX

PGXは、ICE BofAML Core Plus Fixed Rate Preferred Securities Indexに連動しており、米国で発行される固定利率の米ドル建て優先証券へ投資するファンドです。リバランスは毎月実施。

投資対象となる証券の発行体の格付が最低でもB3(B-)以上、かつカントリーリスクについて海外長期ソブリン債務格付が投資適格である優先証券から構成される指数へ連動させるために、銘柄をサンプリングし投資対象としています。

実効デュレーションが4.2年前後・修正デュレーションが5.7年前後と金利リスクは比較的低めで、時価加重クーポン利率も3.3%程度とやや低めです。また、経費率が0.5%を超えているのもコストの観点でかなり気になります。

PFFD

PFFDは、ICE BofAML Diversified Core U.S.Preferred Securities Indexに連動しており、累積的優先株式、非累積的優先株式等さまざまな種類からなる米国の優先証券へ投資するファンドです。固定金利・変動金利のいずれの証券にも投資します。リバランスは四半期に一回(3/6/9/12月)行われます。

米国企業発行の優先証券・転換優先証券の中から、発行残高、額面金額、格付、売買高などによるスクリーニングを経て選定された銘柄が投資対象です。6割以上が金融セクターを占める一方、公益や通信サービスなど幅広い業種の銘柄を含む特徴があります。

経費率は0.23%と今回比較する他のETFと比べて半分程度であり、低コストな優先証券ETFとしておすすめです。

PGF

PGFはICE Exchange-Listed Fixed Rate Financial Preferred Securities Indexに連動しており、銀行・証券・融資・投資・保険など上場している金融機関が発行する固定利率の米ドル建て優先証券へ投資するファンドです。リバランスは毎月実施。

投資対象となる証券の発行体はS&P社の格付でBBB格が約半分を占め、残りの半分程度をBB格とB格が占めます。

実効デュレーションが4.2年前後・修正デュレーションが6.3年前後と金利リスクは比較的低めで、時価加重クーポン利率は5.3%程度と高利回りを狙うETFです。一方、経費率が4ファンドの中でもっとも高いのが玉にキズです。

優先株ETFはどれを選ぶのか?

優先株ETFの中でどれを選ぶかは非常に悩ましいのですが、私ならPFFDを選択します。その理由は①経費率がもっとも低い、②金融以外のセクターへ分散して投資できる、③分配金利回り・騰落率のバランスが良くシャープレシオも高い、の3点です。一方、PFFDはこれら4つの中でファンド規模がもっとも小さく、流動性も気になるところです。次点ではファンドの規模が他より1桁大きく安定しているPFFへの投資を検討するでしょう。

また、必要な費用はファンドの経費率だけではありません。購入時や売却時にも取引手数料がかかります。最近では多くの証券会社が海外株式や海外ETFを取り扱うようになってきており、手数料で優劣がかなりはっきりするようになってきました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

[まとめ]米国株・米国ETFを買うならどの証券会社が一番お得なのか?
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分配金は市場動向に左右されやすい

保有しているだけで得られるため忘れがちですが、ETFの分配金は市場動向により変化します。分配金自体は実際に保有している株式の配当を原資としていますが、マーケット混乱時や不況下では企業の配当方針が変化され、投資家が不利益を被る可能性もあります。

実際、2020年はコロナショッック後に株価は上昇しましたが、多くの企業が業績の先行きの不透明感から減配や無配になったことで、ETFの分配金に影響がありました。

優先株は普通株と比較し配当順位(優先度)が高いとはいえ、配当を行わないのであればやはり影響があるということには違いありません。しかし、普通株の配当に比べると、優先株は配当額が高いと期待できる点で投資妙味があると言えます。

このように、いかにインカム目的の優先株ETFへの投資といえども、同じような投資対象に見えて少しずつ結果が異なるというのが投資における銘柄選びの醍醐味といえるでしょう。