トレーダーにとって経済指標は読めて当然──。
投資を行っている限り、相場が大きく動く可能性のあるタイミングはチャンスと捉えている節があります。
スキャルピング専門の方を除けば、重要指標の発表の前には自分の立ち振る舞いをそれなりに考えておく必要があります。そして、それを活用するには少しばかり事前知識が必要となります。
この記事では、専業トレーダーが経済指標の活用方法の基本について語ってみます。
経済指標とは?
経済指標とは世界各国の政府や中央銀行が発表している経済データで、発表結果は市場に大きな影響を与えます。発表結果が事前予想から大きく乖離する場合は相場を大きく動かすことも少なくなく、ファンダメンタル分析において値動きを左右する重要なデータとして扱われます。
経済指標を見るポイント
経済指標の結果を見るときのポイントはいくつかあります。
月毎や四半期毎に発表される経済指標は、前月比(または前期比)か前年同月比(または前年同期比)で比較することが一般的です。前回発表された数値から傾向が続いているのか、または傾向が変わったのかをチェックします。例えば、米国の消費者物価指数が上昇傾向にある局面で、上昇傾向が加速する発表結果となった場合はインフレ傾向にあると判断されて政策金利の上昇期待が高まり、ドル高が進行しやすくなります。逆に上昇傾向だった消費者物価指数が低下した場合はインフレの落ち着きが意識されて金利の先高観が弱まります。
もう一つは事前予想値と発表数値の比較です。為替レートは現在起きている様々な事象や将来起こりうるであろう材料を織り込みながら動いています。当然ながら経済指標の予想値が出た段階で為替市場には結果が織り込まれ始めていて、結果が予想値とほぼ同じになれば市場の変動は小さくなります。逆に大きく乖離した場合は為替レートはその結果を織り込みに動くので、結果的に大きな値動きとなることがあります。
また、速報値と確報値という形で2回発表される経済指標は速報値に対する反応が当然大きく、GDPといった大きな指標でも速報値と確報値では市場の反応が大きく異なる点も重要なポイントです。
経済指標を確認する上で注意したい点もおさえておきたいですね。例えば同じ指標でも国によって集計方法や期間が異なることがあります。集計時期にタイムラグがあることもあり、重要度が高い指標を狙って取引する場合には事前にしっかりと準備したいです。また、物価指標などで大きく上下変動した場合は、項目や名目値ではなく実質値を比較するなど、確認を怠らないようにすると相場のヒントがあるかもしれません。特に経済指標は結果を受けて市場参加者による仕掛け的な取引が出る時もあり、発表前にポジションを持たなくても発表後の相場の流れが収益チャンスになることを覚えておきましょう。
よく見られる経済指標
経済指標の発表結果が市場に大きな影響を与えるとは言っても、主要国のすべての経済指標をチェックするのは困難です。ここでは市場に参加するために必ず押さえておきたい経済指標とその内容について説明します。
米国雇用統計
米国雇用統計は国の労働省労働統計局(BLS)が毎月発表している、米国の雇用情勢を表す経済指標です。毎月12日を含む週のデータが集計され、原則翌月第1金曜日に発表されます。頻度が高く、調査対象が多いうえ、発表時期も早いことから、市場で最も注目されている指標です。計10項目のデータの中で、特に注目されるのは非農業部門雇用者数(NFP:Non-Farm Payroll)、失業率、平均時給の3つです。発表数値が事前予想から乖離することが少なくなく、発表直後に大きな値動きにつながることもあります。
貿易収支
貿易収支は一国の貿易における一定期間内の輸出額と輸入額の差を示す指標です。貿易は実需の為替取引が伴うため、中長期の相場の流れを予測する際に貿易収支を重視する投資家もいます。毎月各国で発表され、特に米国の貿易収支は市場参加者の注目度が高いです。米国は貿易赤字と財政赤字のいわゆる「双子の赤字」という問題を抱えており、貿易赤字が拡大する場面ではドル安が進行する傾向があります。
消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)
消費者物価指数とは消費者が購入する物やサービスの価格(物価)の変動を示す指標です。一国のインフレ状況を把握する際に使われることが多く、特に季節性要因を受ける生鮮食品を除いた「コアCPI」は非常に注目されます。中央銀行の政策運営の中で「物価目標」を設定しており、その指標としても採用されています。一般的に物価上昇に過熱感がある時は中銀の利上げ期待から通貨高が進行する傾向があると言われています。なお、物価の変動を生産者側から測る経済指標として生産者物価指数(PPI)という指標も発表されています。
失業率、新規雇用者数
失業率は一国の労働力人口のうちに占める失業者の比率を示す指標です。国によって算出方法や公表する頻度が異なり、失業率と新規雇用者数を同時に公表する場合もあります。雇用情勢を把握するのに用いられる代表的な指数で、中央銀行が金融政策を決定する上での重要な指標となります。主に米国や英国、オーストラリア、カナダの失業率が発表される際に相場が大きく動く傾向があります。
ISM製造業/非製造業景況指数
ISM景況指数は全米供給管理協会(ISM)が企業の購買担当者を対象としたアンケート結果を基に算出する景況感を示す指標です。製造業・非製造業で別々に公表され、先行度が高い米国指標であることから非常に注目度が高いです。景況感を0~100で表し 、50ポイントの節目を上回れば景況感が良く、下回れば景況感が悪いと判断できます。
景況感指数
景況感指数は景気動向を示す指標です。世界の様々な機関で公表され、主にドイツの「ZEW景況感指数」や「IFO景況感指数」が挙げられます。これの2つの指標はユーロ圏を代表するドイツの指標であることから、ユーロ相場に影響を与えるのはもちろんのこと、ECB( 欧州中央銀行)の政策見通しを予想する上で重要です。
主要な経済指標についてはこちらの記事でも紹介しています。

まとめ
この記事では経済指標の活用方法について紹介しました。
情報が氾濫している現代で情報の数だけが投資を成功させる要因とはなりにくくなっています。とはいえ、重要な指標については市場の参加者の多くが注目しており、その市場の捉え方を理解することは投資には不可欠なものとなりつつあります。これを機に経済指標について理解を深めていくと良いのではないでしょうか。