[ジャンク債]HYG, JNK, SJNKは何が違う?[ハイイールド社債ETF]

株式・債券

ハイイールド債券に投資するためのETFは、どの銘柄を選ぶべきなのか──。

債券投資で大きくリスクをとるのであればハイイールド債券が選択肢となり、銘柄としてはHYG、JNK、SJNKが有名ですが、分配金でインカム収入を狙っている方にとってどれがもっともよいのかは大きな問題です。

この記事では、ハイイールド社債ETFについて比較してみます。

分配金利回り:JNK>SJNK>HYG

ETFを選ぶためには様々な考え方がありますが、安定した分配金を目的にETFを選ぶなら、シンプルに分配金利回りで選ぶという方法があります。利回りの計算にあたっては価格も重要な要素であり、3銘柄を横に並べてみるとその特徴は明らかです。

なお、比較は2021年末(2021年12月31日)時点での情報をもとにしています。

HYG JNK SJNK
名称 iシェアーズ
iBoxx 米ドル建て
ハイイールド社債
ETF
SPDR
ブルームバーグ
ハイイールド債券
ETF
SPDR
ブルームバーグ
ハイイールド
短期債券 ETF
運用会社 Black Rock State Street State Street
設定日 2007/04/04 2007/11/28 2012/03/14
連動指数 Markit
iBoxx米ドル建て
リキッド ハイイールド
指数
Bloomberg
High Yield
Very Liquid
Index
Bloomberg US
High Yield 350mn
Cash Pay 0-5 Yr
2% Capped Index
経費率 0.48% 0.40% 0.40%
分配時期 毎月 毎月 毎月
年間分配金 $3.497276 $4.630855 $1.142660
分配金利回り 4.01% 4.25% 4.24%
年間騰落率 -0.33% -0.34% 0.74%
価格(2021年末) $87.01 $108.57 $27.15
価格(2020年末) $87.34 $108.94 $26.95
オプション調整後
スプレッド
284.95 282.39 315.43
平均残存年数 4.33年 6.13年 3.41年
標準偏差 6.54% 7.01% 5.71%
シャープレシオ 0.69% 0.62% 0.70%

この比較からわかることは、2021年において分配金利回りは高い方からJNK>SJNK>HYG、年間騰落率は高い方からSJNK>HYG>JNKであることがわかります。

なぜ分配金利回りや年間騰落率に差が出るのか?

先ほどの比較を見ると、同じハイイールド債を組み入れるETFにもかかわらず、なぜこれだけの差が出るのか気になる方も多いでしょう。それは、端的に言えば連動するインデックスが異なるため、組み入れている債券の種別や銘柄、ウエイトが異なることに起因します。

もう少し長めの期間で比較してみましょう。3つの中で歴史が浅いSJNKの設定日(2012/03/14)から2021年末までのパフォーマンスは以下の通りです。

ハイイールド社債ETFパフォーマンス
ハイイールド社債ETFチャート
Portfolio Visualizerにより筆者が独自に作成

グラフはETF価格の変動を示しており、青がHYG、赤がJNK、黄色がSJNKです。どの期間においても中長期的な水準はHYG>JNK>SJNKであることがわかります。

よく見てみるとHYGとJNKはグラフの動きが似ており、いくつかの期間(特に2015年終盤、2018年中盤)においてJNKのみ下落が大きいという期間があり、これは米国のFFレート引き上げのタイミングとかぶっています。一方、2020年3月のコロナショック時の下落を見ると、3銘柄とも下落幅が大きいことがわかります。では、これら3つのETFは具体的にどのように異なるのでしょうか?

HYGは、Markit社が算出・公表するMarkit iBoxx米ドル建てリキッド ハイイールド指数に連動しており、米ドル建てで流動性のあるハイイールド債のユニバースを広範にカバーしています。発行体の時価ウェイト3%を上限に、市場価値で加重平均し算出されます。長期での最大ドローダウンが一番小さいのですが、今回紹介する3つのETFでもっとも経費率が高い点が気になります。

JNKは、ブルームバーグ社が算出・公表するBloomberg High Yield Very Liquid Indexに連動しており、公募発行された米ドル建てのハイイールド債のうち、平均以上の流動性を有する債券(ただし同一発行体の比率に2%の上限あり)から構成されています。HYGと比べると、全体としてハイイールド債の残存期間が長くなっており、金利変化による影響(金利感応度)が大きい特徴があります。この金利感応度の高さが特定の期間においてHYGと異なる価格変動が起きる要因となっており、金利の上昇に弱い一面があります。

SJNKは、Bloomberg US High Yield 350mn Cash Pay 0-5 Yr 2% Capped Indexに連動しており、こちらは最長5年までのハイイールド債かつ同一発行体の比率に2%上限を設けている指数となっています。JNKはもちろんHYGと比較しても残存年数は短く、金利リスクがかなり抑えられているETFです。ただし残存年数が短いということは、同時に利回りが相対的に低いということを意味しており、中長期の騰落率はもっとも上昇率が低くなっています。

ハイイールド債ETFの中でどれを選ぶかは非常に悩ましいのですが、私ならSJNKを選択します。その理由は①経費率がもっとも低い、②金利リスクがもっとも小さい、③同一発行体ウエイトの上限がHYGより低く分散が期待される、の3点です。ハイイールド債は投資対象が投資不適格債(ジャンク債)であることからデフォルト(債務不履行)が起こる可能性も一般的な投資適格社債と比べて高いです。そのため、通常のファンド以上に分散させ1企業の影響を減らすことが重要になってきます。

なお、ハイイールド債へ投資するにあたり必要となる費用はファンドの経費率だけではありません。購入時や売却時にも取引手数料がかかります。最近では多くの証券会社が海外株式や海外ETFを取り扱うようになってきており、手数料で優劣がかなりはっきりするようになってきました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

[まとめ]米国株・米国ETFを買うならどの証券会社が一番お得なのか?
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債券の価格は市場動向で変動する

先にも紹介したように、債券といえども価格は変動しており、その要因として①金利の変化、②クレジット地合いの変化があげられます。そのため、債券ETFは分配金が安定していたとしても、価格の変化により分配金利回りが変化することがあります。特にハイイールド債はクレジットの地合い、もっとわかりやすく言えばリスク選好ということで株式マーケットの動きにも左右されます。

一般的には、十分な分散投資を行えていれば、ハイイールド債は株式ほど大きな価格変化にさらされることはありません。しかし、2020年3月のコロナショッックでは株式だけでなく比較的安全な資産である債券にまで売り浴びせが生じ、価格変化が大きかったことも事実です。

その後は、各国の中央銀行が金融緩和を行ったことで金利は低下し、債券価格が上昇するなど、かつてほとんど見られないほどのボラティリティ上昇がありました。2022年以降は金融緩和縮小や各国の利上げにより、債券価格は下落すると見られています。

このように、いかに分配金目的で安定重視の投資と言えども、将来は誰にもわからないというのが投資の醍醐味といえるでしょう。