[コモディティETF/ETN]GSG, GSP, DBC, DJPは何が違う?[インフレ対策]

株式・債券

コモディティETFとして有名な銘柄は、どれを選ぶべきなのか──。

インフレへ対応するための資産としては商品(コモディティ)が有名で、根強い人気があります。コモディティには金やプラチナなどの貴金属、銅などの卑金属、農作物、原油など様々な種類があり、これらのパフォーマンス特性は異なるため、どれを選ぶのかは悩みどころ。

この記事では、様々な商品の種類をミックスしたタイプのETF(一部ETN)について比較してみます。

コモディティのETF/ETNには様々なものがある

コモディティは何らかの商品を資産化しているため、インフレに非常に強い資産クラスです。

実際にコモディティへ投資してみようとすると、コモディティには様々なものがあり、どの商品にどのように投資するかはかなり迷ってしまうでしょう。直接それぞれの商品へ投資するなら、一般的には先物を使いますが、投資したいすべての商品それぞれを先物で持つのは難しいので、コモディティに連動するETF/ETNを選ぶのが現実的です。

ここではコモディティに連動するETF/ETNについて見ていきましょう。

ETNとは...
ETNとは投資商品の一種であり、その裏付けとなる資産を保有せず、その発行体となる金融機関が指数との連動性を保証しています。一方、よく知られているETFという投資商品は、株価指数などの指数の動きに連動させるために、指数構成銘柄の株式などを裏付け資産として保有しています。

なお、ここでは様々なコモディティのミックスになっているものを比較します。金や原油に特化したETFは別の記事で紹介しています。

GSG GSP DBC DJP
名称 iシェアーズ
S&P GSCI
コモディティ・
インデックス・
トラスト
iPath
S&P GSCI
Total Return
Index ETN
Invesco DB
Commodity Index
Tracking Fund
iPath
Bloomberg
Commodity Index
Total Return
ETN
運用会社 Black Rock Barclays Invesco Barclays
設定日 2006/07/10 2006/06/06 2006/03/02 2006/06/06
連動指数 S&P GSCI
トータル・リターン・
インデックス
S&P GSCI
トータル・リターン・
インデックス
DBIQ
オプティマム・イールド・
ディバーシファイド・
コモディティ・インデックス・
エクセス・リターン
ブルームバーグ・
コモディティ・
インデックス・
トータル・リターン
経費率 0.75% 0.70% 0.87% 0.70%

なぜ分配金利回りや年間騰落率に差が出るのか?

実はコモディティがミックスされたETF/ETNは、同じようでもその価格変動が大きく異なります。その理由としては、端的に言えば連動するインデックスが異なるため、組み入れている銘柄やウエイトが異なることに起因します。

長めの期間で比較してみましょう。4ファンド(GSG、GSP、DBC、DJP)を比較します。これらの中で歴史が浅いGSGの設定日(2006/07/10)から2022年4月末までのパフォーマンスは以下の通りです。

コモディティETFパフォーマンス
コモディティETFチャート
Portfolio Visualizerにより筆者が独自に作成

グラフはETF/ETN価格の変動を示しており、青がGSG、赤がGSP、黄色がDBC、緑がDJPです。少しわかりにくいですが、青のGSGと赤のGSPは比較的重なっており、それより上に緑のDJPが、さらに上に黄色のDBCが位置しています。つまり、長い期間で比較すると、単純な騰落率ではDBCがもっとも上昇し、GSGやGSPは上昇率が低いことになります。2020年3月のコロナショック時の下落を見ると、4つの銘柄はいずれも大きく下落し、それ以降の上昇が顕著です。そして、2022年以降はより上昇が顕著になっています。

それぞれのETF/ETNの特徴を順に見ていきましょう。

GSG

iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト(GSG)が連動する指数は、S&P GSCIトータル・リターン・インデックスであり、世界経済の全般的な商品価格の動向とインフレを示す先行指標に連動するファンドです。

様々な商品を含んでおり、約60%をエネルギーが占め、次いで農作物が約18%、工業用金属(卑金属)が約11%、家畜が約6%、貴金属が約4%という構成ウエイトとなっています(2022年3月末時点)。他のミックスされたコモディティと比べるとエネルギーの比率が高い特徴があります。

経費率は0.75%であり、インデックス型の海外ETFにしては高い部類に入りますが、コモディティETFとしては並程度の水準です。また、SBI証券では取り扱いがありません。

GSP

iPath S&P GSCI Total Return Index ETN(GSP)は、S&P GSCIトータル・リターン・インデックスに連動しており、先ほどのGSGと同じ指数に連動するファンドです。

運用会社はBarclaysで、ETF/ETNの世界ではややマイナー気味。個人的にはこのETNを選ぶなら、BlackRockのETFであるGSGを選びます。

経費率は0.7%であり、若干GSGよりも低い程度。SBI証券では取り扱いがありません。

DBC

Invesco DB Commodity Index Tracking Fund(DBC)は、DBIQ オプティマム・イールド・ディバーシファイド・コモディティ・インデックス・エクセス・リターンに連動しており、世界で最も頻繁に取引される重要な14の現物商品先物契約へ投資するファンドです。

様々な商品を含んでおり、約57%をエネルギーが占め、次いで農作物が約22%、工業用金属(卑金属)が約13%、貴金属が約9%という構成ウエイトとなっています(2022年3月末時点)。S&Pのインデックスと比べると、金属の占める割合が多めですね。

経費率は0.87%と今回比較する他のETFの中では最も高いですが、設定日が最も古く実績のあるファンドです。

DJP

iPath Bloomberg Commodity Index Total Return ETN(DJP)はブルームバーグ・コモディティ・インデックス・トータル・リターンに連動しており、構成銘柄は現物商品22種の先物契約です。

ブルームバーグ・コモディティ・インデックスは、以前は「ダウ・ジョーンズUBS商品指数(Dow Jones UBS Commodity Index)」でしたが、インデックスの算出元の変更とともに名称が変わっています。

内訳としては、約36%をエネルギーが占め、次いで穀物が23%、貴金属が約17%、工業用金属(卑金属)が約14%、農産物が約6%、畜産物が約4%という構成ウエイトとなっています(2022年4月末時点)。他のコモディティ・インデックスと比べると、顕著にエネルギーの比率が低く、金属や穀物の占める割合が多いですね。バランスのとれた内訳になっていると思います。

経費率は0.70%とETNで選ぶならおすすめです。

コモディティETF/ETNはどれを選ぶのか?

コモディティETF/ETNをどのように選ぶべきかは非常に悩ましい問題です。原油や金など特化したETFもありますし、今回紹介したETF/ETNのわざわざこの商品に投資するのは...というものも正直あるでしょう。私なら紹介してなんですが、金または原油に特化したETF、次点で今回紹介したDJPをおすすめします。その理由は①コモディティの保有動機としてはインフレ対策が主である、②ミックスしたコモディティETF/ETNを選ぶならできるだけ分散した方がよい、の2点です。ただ、個人的には保有資産の裏付けのないETNよりは、保有資産の裏付けのあるETFの方が望ましいとは考えています。

今回紹介したETF/ETNは実は取り扱っている証券会社が限られており、ネット証券大手のSBI証券では取り扱いがありません。楽天証券では一部取り扱いがありますが、個別銘柄を含めより多くの海外ETF/ETNを揃えているサクソバンク証券がもっともおすすめです。

[まとめ]米国株・米国ETFを買うならどの証券会社が一番お得なのか?
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リスク資産の一定程度をコモディティとする選択肢は持っておきたい

コモディティはインフレに強いという側面が強調されがちですが、他にもコモディティの価格変動が株式市場と異なるという点にも注目しておきたいところです。

コモディティ価格の変動要因が株式市場と異なることが多いため、株式投資と組み合わせるとリスクヘッジの効果が期待できます。例えば農産物は災害や天候の影響を、貴金属やエネルギーは為替レートや政治の影響を強く受ける傾向があります。

実際、2022年のロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー価格や金価格が高騰し、世界中のインフレに拍車をかけることになりましたが、コモディティ投資によりインフレによる資産価値の目減りを防げた投資家もいるということは、資産の一部をコモディティでもつ有用性が証明されました。

何もない時にはコモディティは配当などのキャッシュフローを生み出さずコストのかかるアセットクラスとして忌避されることも多いですが、コモディティをうまく活用することを検討することもアセットアロケーションの醍醐味といえるでしょう。