FXを行う上で各通貨の特徴を理解しておくことは重要です。
市場が混乱した際に上昇しやすい通貨、地政学的な影響を受けやすい通貨、流動性が低い通貨など、取引できる通貨には様々な特徴があります。
この記事では、専業トレーダーがFXの世界でよく使われる通貨についてその特徴を紹介してみます。
FXでよく使われる通貨の基本知識
まずはFXの世界でよく使われる通貨を把握しておきましょう。
まず、FXでよく使われる通貨は、世界でよく使われている通貨と必ずしも一致しないという点を知っておく必要があります。通貨を分類する方法はいくつかありますが、その中でもG10通貨と呼ばれているものであり、世界中でもっともよく使われている通貨の総称です。なお、先進国首脳会議で知られるG10国とは一致していません。
- JPY(日本円)
- USD(米ドル)
- EUR(ユーロ)
- GBP(英ポンド)
- CHF(スイスフラン)
- CAD(カナダドル)
- AUD(豪ドル)
- NZD(ニュージーランドドル)
- NOK(ノルウェークローネ)
- SEK(スウェーデンクローナ)
一方、FXでよく使われる通貨には、G10通貨の中でも特に流動性の高い通貨に加え、高金利である通貨が含まれます。特に発展途上国の高金利通貨はFX業者が取引を推奨する口実としてよくあげられます。
- JPY(日本円)
- USD(米ドル)
- EUR(ユーロ)
- GBP(英ポンド)
- CHF(スイスフラン)
- CAD(カナダドル)
- AUD(豪ドル)
- NZD(ニュージーランドドル)
- TRY(トルコリラ)
- ZAR(南アフリカランド)
世界的に主要なFX取引通貨ペアを把握しておくことも重要です。
- USD/JPY(ドル円)
- EUR/USD(ユーロドル)
- GBP/USD(ポンドドル)
- USD/CHF(ドルスイスフラン)
- AUD/USD(豪ドルドル)
- USD/CAD(ドルカナダドル)
- NZD/USD(ニュージーランドドルドル)
これら7つの取引ペアで世界中のFX取引高の80%を占めていると言われています。なお通貨ペアの呼び方で2つの通貨の順番は慣用的に用いられているもので、ドル円を円ドルなどということはまずありません。
また、米ドルを含まない通貨ペア(EUR/USDやEUR/GBPなど)は「クロス通貨ペア」と呼ばれ、特にUSD/JPY以外の日本円のペア(EUR/JPY、AUD/JPYなど)は「クロス円」と呼ばれます。世界の主要通貨である米ドルのペアとそれ以外を分けているという考え方は理解しておきましょう。
ここからは様々な切り口で各通貨を見ていきましょう。
安全通貨
JPY(日本円)
日本円は米ドル・ユ-ロと並ぶ主要3通貨であり、FX取引額としては第3位です。世界的に米ドルやユ-ロが決済通貨(鉱工業製品、石油代金の支払い)として使用される割合が高いのと比較すると、日本円が決済通貨として利用されている割合は低く、近年は円の国際化、規制の撤廃などを含め、日本政府は円の地位の向上を目指しているのが現状です。
日本円が安全資産と整理される理由は、日本は「世界で最も外貨建資産を多く保有している国」であるためと考えられています。日本は各国の通貨をはじめとした資産を大量に保有しているため「世界最大の対外純資産国」とも言うことができます。これが有事に日本が安定していると捉えられているため、日本円が買われることになる理由です。
地政学的には、中国(人民元の切り上げなど)・北朝鮮(核兵器開発)などのアジア圏諸国に影響されやすい特徴があります。またアジア圏における中国との主導権争いにも注目です。
USD(米ドル)
アメリカは世界経済の中心であり、その通貨である米ドルは国際間取引で広く利用されるなど世界の基軸通貨であることは疑いようもありません。
基軸通貨としての米ドルは政治・経済情勢、金利・株価動向など多数の要因で動きます。近年では、双子の赤字(財政・経常赤字)が市場変動の大きな材料にされることで注目されています。
世界中の国々が世界経済の中心である米国の景気に左右されるため、米国の経済指標は市場参加者にとって見逃せないものとなっています。重要な経済指標として貿易収支、経常収支、失業率、GDP、消費者物価指数などが挙げられます。
CHF(スイスフラン)
永世中立国スイスの通貨であるCHF(スイスフラン)は、地政学的リスクが高まった際に資金が集まりやすい退避通貨としての特性があります。戦争・紛争等が各地で起こった時には、逃避先として選好されることがしばしばあります。heidi(ハイジ)、swiss(スウィスウィ)と呼ばれることもあります。
また、USD/CHFのペアはドル安・高に相場が大きく動き始める前に他の主要通貨に先行して動き始める傾向にあります。はっきりした理由はわかっていませんが、スイスは市場での流動性の規模が他の主要通貨より小さいことで需給に対して敏感で動きやすいという説があります。
メジャー通貨・マイナー通貨・エキゾチック通貨
通貨の流動性に応じた区分けが存在します。FX独自の方法として通貨ペアの基準でメジャー・マイナー・エキゾチックと分ける方法もあるのですが、この方法はあまり根拠がなく、FX業者によっても定義がまちまちです。ここでは金融市場で一般的に使われる分類として、銀行規制で定義されたものを紹介しましょう。≫ 参考:Minimum capital requirements for market risk
メジャー通貨
メジャー通貨とは、外国為替市場において多くの市場参加者が頻繁に売買している通貨のことで、一般的には以下の7通貨を指します。
- JPY(日本円)
- USD(米ドル)
- EUR(ユーロ)
- GBP(英ポンド)
- AUD(豪ドル)
- SEK(スウェーデンクローナ)
- CAD(カナダドル)
マイナー通貨
マイナー通貨とは、メジャー通貨ペアからメジャー通貨を除いたものであり、取引参加者が少なめで、市場の流動性もやや低めの通貨のことです。以下の13通貨が該当します。
- NZD(ニュージーランドドル)
- CHF(スイスフラン)
- CNY(人民元)
- MXN(メキシコペソ)
- SGD(シンガポールドル)
- HKD(香港ドル)
- RUB(ロシアルーブル)
- NOK(ノルウェークローネ)
- ZAR(南アフリカランド)
- TRY(トルコリラ)
- KRW(韓国ウォン)
- BRL(ブラジルレアル)
- INR(インドルピー)
エキゾチック通貨
エキゾチック通貨とは、取引参加者が極端に少なく、金融市場の流動性が低い通貨のことです。メジャー通貨・マイナー通貨に該当しないものが対象です。非常に数が多いのですが、ここでは債券の世界でそれなりに取引されている比較的有名な通貨を代表としてあげておきましょう。
- DKK(デンマーククローネ)
- PLN(ポーランドズロチ)
- CZK(チェココルナ)
- HUF(ハンガリーフォリント)
- TWD(台湾ドル)
- THB(タイバーツ)
- IDR(インドネシアルピー)
- MYR(マレーシアリンギット)
- ILS(イスラエルシェケル)
- PEN(ペルーソル)
- PHP(フィリピンペソ)
- RON(ルーマニアレン)
- COP(コロンビアペソ)
- ARS(アルゼンチンペソ)
- CLP(チリペソ)
コモディティ(商品)通貨 ≒ 資源国通貨
コモディティ(商品)通貨と資源国通貨はほぼ同義であり、その中でも特に産油国の通貨をペトロカレンシーと言うことがあります。
CAD(カナダドル)
カナダドルはloonie(ルーニー)とも呼ばれます。国有面積において世界第二位を誇るカナダは豊富な森林資源や天然ガス、石油を持つ天然資源国です。コモディティ市場における値動きはカナダドルの動きに大きな影響を与えます。
また、カナダは米国と経済が密接な関係にあることで、カナダドルには特有の動きが見られます。それは、米国経済との関係性からEUR/CADのようなマイナー通貨ペアにおいて、カナダドルが米ドルと似たような動きをするという点です。残念ながら、対米ドルではその動きは非常に予測しづらく、ポジションをとるメリットはないと言えるでしょう。
AUD(豪ドル)
豪ドルはaussie(オージー)とも呼ばれます。オーストラリアは鉱山や牛肉、綿や小麦といった資源を有しており、これらのコモディティ市況と密接な関係があります。また、かなりの量の石炭を中国へ輸出していることで中国の影響を受けやすいのですが、この点は見逃されがちです。
また、一般的に他の中央銀行より高い金利を好む傾向のあるオーストラリア準備銀行(RBA)による政策金利の決定が豪ドルの強弱に大きな影響を与えます。
NZD(ニュージーランドドル)
ニュージーランドドルはkiwi(キウイ)とも呼ばれます。ニュージーランドは国際貿易や観光と並び農業はニュージーランド経済の柱であり、農産物銘柄の値動きの影響を受けます。
地理的にはオーストラリアに隣接しており「オセアニア通貨」としてひとまとめにされることもありますが、必ずしも豪ドルと連動するわけではなく、ニュージーランド準備銀行の決定する政策金利にも注意を払う必要があります。
NOK(ノルウェークローネ)
ノルウェーは北欧に位置するEU(欧州連合)非加盟国のひとつです。過去には1972年と1994年にEU加盟の是非を問う国民投票が行われましたが、いずれも否決されており、通貨もユーロではなく独自のノルウェークローネが使われています。
ノルウェーの主要産業は石油や天然ガスの生産であり、輸出の約42%を占めています。豪ドルやカナダドル同様に資源価格変動の影響を受けやすい特徴があります。また、豊富な水産物も資源に次ぐ主要輸出品目ですが、こちらはFXという観点ではあまり気にしなくてよいでしょう。
高金利通貨 ≒ 資源国通貨 + 新興国通貨
一般に「高金利通貨」と呼ばれてるものは先に紹介した資源国通貨と新興国通貨を指しています。資源国は資源の輸出に対する需要で通貨への需要も高く、金利が高止まりすることで為替レートが安定しています。また、新興国は経済発展への期待・国内インフレの防止・経済発展の不確実さ(リスク)に伴うプレミアム等の要因で金利が高く設定されています。
高金利通貨の中でも新興国通貨についてはその金利の高さからFX初心者に人気がありますが、金利が高いのには上記のように理由があり、実際ここ数年は新興国通貨に対して円高が進んでいるため、含み損を抱えている人が多いようです。私も高金利目的での新興国通貨の取引はおすすめできません。
ZAR(南アフリカランド)
南アフリカは1994年のアパルトヘイト廃止後から着実に経済成長を果たし、 現在ではアフリカ第2位の経済大国としての全GDPの約20%を占めるなどアフリカ経済を牽引しています(1位はナイジェリア。ただし治安や通貨の安定性はまだまだこれから)。なお南アフリカはアフリカ唯一のG20参加国です。
南アフリカはインドと友好関係を持っており、今後のインド経済の発展の恩恵を受ける可能性があります。
TRY(トルコリラ)
トルコリラはFXの世界では超有名な高金利通貨です。何が有名かと言えば、その金利の高さから一度はポジションを持ちたくなりますが、一度持つと最後、リラ安円高が際限なく続きます。
トルコではイスラム教への配慮からインフレ時に利上げを実施しにくい(むしろ利下げを行う)という背景があり、現代の経済学のセオリーが通じません。そのためインフレが放置されるか現状の高金利が維持されるかということで円高基調を止める材料が発生しにくいというのがこれまでの慣例でした。
しかし、世界がインフレ対策する中でリラ安は止まる気配を見せず国民生活に影響が出るまでに。そして2021年12月にエルドアン大統領が「リラの外貨に対する下落率が預金の金利水準を上回った場合、差額を政府が補塡する」という政策を打ち出したことでリラが急騰し、リラ円は6円台から10円台まで短期間のうちに上昇しました。そのボラティリティは一時的に年率80%にも達し、トルコリラ円買いで掴まっていた方にとって逃げられる絶好の機会だったと思われます。
MXN(メキシコペソ)
メキシコは中南米の中でブラジルに次ぐ経済規模の新興国です。
あまり知られていませんが、メキシコは銀などの鉱物資源が豊富であり、メキシコ湾岸では石油や天然ガスが産出されます。資源国かつ新興国ということで通貨の動きも比較的大きい特徴があります。
またお隣に位置するアメリカの影響も当然大きく、アメリカ経済の影響を大きく受けてしまう国のひとつとしても有名です。
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まとめ
この記事ではFXに使われる主要な通貨を紹介しました。
世の中には様々な通貨があります。それぞれは各国の情勢を反映し、その相対的な価値が絶えず変化しているため、うまく取引を行うことで利益をあげるというのがFXの基本的な考え方です。みなさまには各通貨の特徴をご理解いただき、その資産形成に少しでもお役に立てれば幸いです。