配当利回りの高い、いわゆる「高配当株」は長らく人気を誇ります。
企業が高配当を維持できる理由としては、業界を牽引し堅実なビジネスや健全な財務状況などの安定性があるという点にあり、特に配当でのインカムゲインを好む傾向は日本人に顕著です。
この記事では、高配当株式で有名な企業の中からおすすめできる銘柄を見ていきます。
なぜ高配当株式投資は難しいのか?
インカムゲインを好む日本人に人気な高配当株式投資ですが、その難しさは意外と知られていません。配当利回りの高い株式を持つだけに見える高配当株式投資はなぜ難しいのでしょうか?
一般的に高配当株式は安定していますが、会社があげている利益を配当として外部へ還元しているため、社内投資という意味では効率が低くなり成長性が低くなります。言い換えれば、高配当な企業は株価の大きな上昇をあまり見込めないという特徴があります。
成長性の低い企業が株価を維持するためには、現状のビジネスや財務状況などの安定性を維持できることが必要条件であり、これが高配当企業が難しいという理由です。つまり、高配当な企業の株式の価格は現在の安定性に裏付けられており、ひとたびビジネスや財務状況に懸念が生じると株式価値が大きく低下します。
そのため長期保有での高配当目的の投資は、長期での安定性を見込める銘柄を選ばなければ失敗するのです。
ここからは高配当株式として有名なものの中から特におすすめの5銘柄を見ていきましょう。
ベライゾン・コミュニケーションズ(Ticker: VZ)
ベライゾン・コミュニケーションズは米国の加入者第一位の携帯電話事業者です。日本で言えばNTTドコモのような企業というとわかりやすいでしょうか?
ベライゾンの主力事業である携帯電話事業は近年のGAFAMに代表されるメガテックのような成長性こそ見込めませんが、その安定性は特筆すべきものがあります。2008年のリーマンショック時にも同社の売り上げは下がることがなく、むしろ微増となっており、不況であっても携帯電話事業の需要は堅調という傾向にあるのです。
ベライゾンは高配当であること自体もさることながら、2004年以来増配を続けているのも特徴で、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでも配当を維持しており配当の安定性も大きな魅力です。
AT&T(Ticker: T)
AT&Tはベライゾンに次いで米国の加入者第二位の携帯電話事業者です。ベライゾンと似た特徴があるのですが、高配当株の世界ではなぜかベライゾンよりも取り上げられることが多く有名です。
リーマンショックやコロナショックでも安定した株価・配当を維持していた点は魅力的です。
ただし、AT&Tは2021年にそれまで36年連続で増配してきた配当の減配を発表しました。減配は翌期のメディア事業の分社化に伴うものであり株価は下落しています。しかし、捻出したキャッシュを財務体質の改善・5G関連の設備投資へ利用しており、悪材料が織り込んだ上で配当利回り9%超というのは投資のチャンスであるとも言えるでしょう。
IBM(Ticker: IBM)
IBMは正式な社名は「インターナショナル・ビジネス・マシーンズ」であり、コンピュータ関連製品やサービスを提供する企業です。
IBMはかつで米司法省に独占禁止法違反で提訴されるほどに企業で使われる大型コンピュータの独占を続けており、1980年代には8度も世界の時価総額1位に輝いていました。現在もコンピュータやシステム販売などオンプレミスなビジネスでの安定性が光っていましたが、今後はクラウド事業や、アナリティクス・AI・セキュリティ・IoTといった領域でのソリューション事業を目指しています。
積極的な自社株買いや長年増配を続けていたなど株主還元の意識が高く、投資家にとって魅力的な企業のひとつです。配当利回りは5%前後。
アルトリア・グループ(Ticker: MO)
アルトリア・グループはタバコの製造・販売を行う米国最大の企業です。米国外での事業を担うフィリップ・モリスはもともと同じ企業だったのですが、2008年にスピンオフにより分離しており、別の企業となっています。2019年には合併も模索されましたが、投資家からの反発を受け破断しました。
アルトリアはキャッシュ創出能力が高く、50年以上増配を続けてきたため、高配当銘柄として非常に人気が高く、設備投資も必要ないことから財務的な懸念は長らく見られませんでした。
ただし、近年は健康への影響からたばこ産業の売り上げは減少しています。電子たばこ大手のJUUL社へ出資するなど打開策を図っているものの、電子たばこの健康被害が発生するなど逆風が続いています。ジリ貧とならないよう、アルトリアへの投資は慎重に検討しましょう。
ロイヤル・ダッチ・シェルズ(Ticker: RDSB → 統合しSHELになりました
ロイヤル・ダッチ・シェルは、オランダのロイヤル・ダッチとイギリスのシェルが合併してできたオイルメジャーの一角です。ロイヤル・ダッチ・シェルの特徴は高配当、70年以上減配であり、非常に人気な銘柄のひとつです。なお。米国の同業企業であるエクソンモービルも高配当株として人気です。
ロイヤル・ダッチ・シェルは原油や天然ガスといった化石エネルギーだけでなく、太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーへの投資に積極的な点が特徴です。オイルメジャーは環境負荷の高いという事業の性質から公的年金基金の投資対象から外されることが増えてきた背景もあり、同社は積極的に事業転換を図っているという印象です。
ロイヤル・ダッチ・シェルへの投資に伴う大きなメリットは、通常の米国株と異なり、米国での配当に対する課税である「外国源泉徴収税額」の対象とならない点です。これは同社が米国においてADR(米国預託証券)として上場しているため、課税のされ方が異なるのです。なお、ロイヤル・ダッチ・シェルのADRには「オランダ株としてのRDSA」と「英国株としてのRDSB」の二種類があり、RDSAは外国源泉徴収税額として15%徴収され、RDSBでは課税がないので、日本の投資家にはRDSBが有利です。絶対に間違えないようにしましょう。
2022年1月末、ロイヤル・ダッチ・シェルズは統合されSHELという新しいTickerが付与されました。本社機能が英国に統合されるということで、英国株のADRとなりました!高配当銘柄として保有を続けるメリットが維持され、安心ですね。
高配当株式へ投資するには?
高配当株式に投資するのであればいくつかの方法が考えられ、大きく①高配当株式へ投資するようなファンド(ETF等)へ投資する、②個別銘柄に投資することです。
ETFか個別銘柄のいずれに投資するにしろ、証券会社で口座が必要となります。最近では多くの証券会社が海外株式や海外ETFを取り扱うようになってきており、手数料で優劣がかなりはっきりするようになってきました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

まとめ
ここでは高配当株として有名な企業について紹介してみました。今では私たちの生活に欠かせないものになった企業であり、今後もその成長性が見込まれます。
皆さまには世界を代表する高配当企業について理解していただき、投資に生かすことで少しでも豊かな生活を送ることのお役に立てればと願っております。