[米国株ETF]QQQ, VOO, VTIは何が違う?DIAとも比較してみた!

株式・債券

米国ETFとして有名な銘柄は、どれを選ぶべきなのか──。

米国株ETFにはいくつか選択肢があり、長期投資目的で投資する上でどのETFを選ぶのかは大きな問題です。特に同じ米国株ETFにもかかわらず、これらのパフォーマンス特性は異なるのが悩みどころ。

この記事では、米国株ETFについて比較してみます。

分配金利回り:DIA>VOO>VTI>>QQQ

積み立て投資を目的にETFを選ぶためにはいくつかの観点が考えらます。シャープレシオや分配金再投資リターンなど様々な指標がありますが、ETFを選ぶならシンプルに分配金利回りで選ぶという方法があります。利回りの計算にあたっては価格も重要な要素であり、4銘柄を横に並べてみるとその特徴は明らかです。

なお、比較は2021年末(2021年12月31日)時点での情報をもとにしています。

DIA QQQ VOO VTI
名称 SPDR
ダウ・ジョーンズ
工業株価平均
ETF Trust
インベスコ
QQQトラスト・
シリーズ1 ETF
バンガード
S&P 500 ETF
バンガード
トータル・ストック
マーケット ETF
運用会社 State Street Invesco Vanguard Vanguard
設定日 1998/01/14 1999/10/03 2010/09/07 2001/05/31
連動指数 ダウ工業株
30種平均
インデックス
NASDAQ100
インデックス
S&P500
インデックス
CRSP US
トータル・マーケット
インデックス
経費率 0.16% 0.20% 0.03% 0.03%
分配時期 毎月 3・6・9・12月 3・6・9・12月 3・6・9・12月
年間分配金 $5.742980 $1.697000 $5.437000 $2.930000
分配金利回り 1.88% 0.54% 1.58% 1.51%
年間騰落率 18.81% 26.81% 27.02% 24.04%
価格(2021年末) $363.32 $397.85 $436.57 $241.44
価格(2020年末) $305.79 $313.74 $343.69 $194.64
標準偏差(年) 13.41% 15.27% 13.29% 13.78%
シャープレシオ(年) 1.00 1.33 1.13 1.09

この比較から2021年において、分配金利回りではDIA>VOO>VTI>>QQQ、騰落率ではVOO>QQQ>VTI>DIAであることがわかります。

なぜ分配金利回りや年間騰落率に差が出るのか?

先ほどの比較を見ると、同じように米国株式という名目のETFにもかかわらず、なぜこれだけの差が出るのか気になる方も多いでしょう。それは、端的に言えば連動するインデックスが異なるため、組み入れている銘柄やウエイトが異なることに起因します。

もう少し長めの期間で比較してみましょう。4ファンド(DIA、QQQ、VOO、VTI)を比較します。これの中で歴史が浅いVOOの設定日(2010/09/07)から2021年末までのパフォーマンスは以下の通りです。

米国株ETFパフォーマンス
米国株ETFチャート
Portfolio Visualizerにより筆者が独自に作成

グラフはETF価格の変動を示しており、青がDIA、赤がQQQ、黄色がVOO、緑がVTIです。少しわかりにくいですが、黄色のVOOと緑のVTIは比較的重なっており、それより上に赤のQQQが、下に青のDIAが位置しています。つまり、長い期間で比較すると、単純な騰落率ではQQQがもっとも上昇し、DIAは上昇率が低いことになります。2020年3月のコロナショック時の下落を見ると、4つのETFはいずれも大きく下落し、それ以降の上昇が顕著です。

それぞれのETFの特徴を順に見ていきましょう。

DIA

DIAが連動する指数は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出・公表しているダウ平均株価インデックスであり、「ダウ平均」「ダウ工業株30種平均」「ニューヨーク・ダウ」「ニューヨーク平均株価」とも呼ばれます。

その名称の通り米国に上場する様々な業種の代表企業から計30銘柄選出し、平均株価をリアルタイムで公表する株価平均型株価インデックスです。インデックス算出を開始した当初は工業株が市場を占めていたため「工業」と名がつくものの、各業種セクターから銘柄を抽出しています(※公益事業と輸送事業セクターは組み入れ対象外)。後述する3つのETFに連動する指数をはじめ、一般的な指数は時価総額加重平均により算出しているのと比較すると、特定の値がさ株の影響が大きいです。また、各セクターからの銘柄選定・入れ替えは委員会により決定されるものの、やや主観的な傾向が見られ、その入れ替えも不定期であるという特徴があるます。

各セクターから銘柄を選ぶとはいえ株価平均であるため、指数変動の傾向がわかりにくいというのも特徴です。とはいえ、ダウ平均に組み入れられた銘柄はブルーチップとも呼ばれ、優良銘柄であることには違いありませんし、ダウ平均が米国の代表的な株価指数であることは変わりありません。

パフォーマンスの傾向としては、ここ2000年以降で躍進したIT系セクターの比率が相対的に低いため、騰落率ではQQQ、VOO、VTIより低い水準です。

また、DIAの経費率は0.16%であり、海外のパッシブ型運用のETFにしては高い水準です。

QQQ

QQQは、NASDAQ100インデックスに連動しています。こちらはNASDAQに上場している約5,500銘柄のうち、上位100銘柄を時価総額で加重平均し算出されています。NASDAQ100は銘柄数こそ100まで絞られていますが、NASDAQ全体の時価総額のうち約7割を占めます。

NASDAQ100はウエイトの半分以上をテクノロジーセクターが占めており、比率が非常に高い特徴があります。そのためグロース株が好調な場面では米株市場全体に比べて大きく上昇する傾向にあります。先ほどのチャートで比較してみても、QQQは他の3つのETFと比べ2013年以降の上昇が顕著なことが読み取れますね。

ただし、QQQの経費率は0.20%であり、海外のパッシブ型運用のETFにしては高い水準です。また、今回紹介する4つのETFでもっとも経費率が高いのがネックです。

VOO

VOOは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出・公表しているS&P500インデックスに連動しています。こちらは市場規模、流動性、業種等を勘案して選ばれたニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場および登録されている約500銘柄を時価総額で加重平均し算出されています。

S&P500は米国株式市場全体に対し約80%の時価総額比率を占めており、米国市場全体の動きを概ね反映していると言えます。S&P500のうち約25%は情報技術セクターが占める一方でヘルスケア・一般消費財も約25%を占めており、グロース株が強い相場・バリュー株が強い相場のいずれにおいても上昇を見込めるため、長期投資には心強いですね。

また、米国株は他のどの国のマーケットよりも安定して継続的に上昇しているため、投資妙味があるのも特徴。全世界株式のように他の国を入れると分散という観点では優れますが、言い換えればリターンが米国のみと比べると劣る傾向にあるため、米国オンリーという投資なら十分に分散をはかれているとも言えます。

経費率は0.03%であり、今回比較する4つのETFの中ではVTIと並びもっとも低い水準にあります。また、この水準は他のどのETFと比較しても低いと言えるため、コスト重視であればかなりおすすめ。

VTI

VTIはFTSE社が算出・公表しているCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動しています。全米に上場する株式から構成されており、大型・中型株はもちろん、小型・超小型の銘柄が網羅されています。

VTI一本で米国全体に投資することができるということで、米国全体の成長の恩恵を受けることができます。投資家の多くが米国市場がこれからも大きく成長を続けると見込んでおり、他のどの国よりも投資対象に含める意義があると言えます。

米国全体へ投資できるにもかかわらず、VTIは経費率0.03%であり、今回比較する4つのETFの中でVOOと並びもっとも低い水準にあります。分散を強く意識して米国へ投資するのであればVTIを選ぶことになるでしょう。

米国株ETFはどれを選ぶのか?

もしどれかひとつを選ぶとすると、私ならVOOを選択します。理由としては、①経費率の低さ、②ファンド規模が大きく信頼できる、③米国市場全体の80%をカバーし(パフォーマンス傾向の不明な)小型株を除いている、という点があげられます。

ただし、インデックスに含まれる銘柄のうち特定の企業にのみ投資魅力を感じるのであれば、ETFではなく個別銘柄に直接投資する方法もあります。最近では多くの証券会社が米国株を取り扱うようになったため、海外ETFを購入するのとあまり変わらない手間で購入できるようになりました。手数料を比較して実際にどの証券会社を使うか検討してみるとよいでしょう。

[まとめ]米国株・米国ETFを買うならどの証券会社が一番お得なのか?
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分配金は市場動向に左右されやすい

保有しているだけで得られるため忘れがちですが、ETFの分配金は市場動向により変化します。分配金は実際に保有している株式の配当を原資としているため、企業が配当を出さないとETF分配金も減ることにつながります。

実際、2020年はコロナショッック後に株価は上昇しましたが、多くの企業が業績の先行きの不透明感から減配や無配になったことで、ETFの分配金に影響がありました。

米国株ETFは高配当株式ETFと異なり、分配金だけでなく価格自体の上昇、つまりキャピタルリターンを狙える点が魅力です。コロナショック以降、各国で金融緩和が行われ金利は大きく低下し、GAFAなどのメガテックを中心にグロース株が躍進しマーケット全体を牽引しました。そのような恩恵をしっかり受けながら全世界に分散投資できる(ついでに分配金をもらえる)というのが米国株ETFの魅力と言えます。

このように、いかに分散するための米国株ETFへの投資といえども、同じような投資対象に見えて少しずつ結果が異なるというのが投資における銘柄選びの醍醐味といえるでしょう。