暗号資産(仮想通貨)業者を選ぶポイント
まず、業者を選ぶポイントについてですが、私が業者を選ぶ上で重要視したのは以下の点です。
- Bitcoin(ビットコイン)の現物手数料
- APIの利用可否、安定性
- 国内で登録・認可された業者か
1点目は最もメジャーな暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの現物取引の手数料です。日本ではビットコイン取引所の現物手数料がかからない業者がCoincheckであり、確実に口座を開設しておきたい業者です。
2点目は自動取引を行うためのAPIの存在です。私は裁量でも取引を行いますが、暗号資産(仮想通貨)では主に自動取引としていますので、自動取引のために必要なるAPIを業者が提供しているかが重要です。また、国内のとある業者(Zaif)はAPIを提供していますが、安定性が低く挙動に不明瞭な点が多いため実用的ではなく、APIの安定性なども考慮する必要があります。
3点目はうっかり忘れがちですが、安心して利用できるかという点で非常に重要です。海外取引所は日本よりも高いレバレッジで取引できるため魅力的に感じられるかもしれませんが、ざっと問題点を挙げれば「スプレッドや手数料が高い」「出金時のトラブル」「セキュリティ上の懸念」などがあり、トラブル時に対応してもらえない懸念があるため、お勧めできません。また、税制上も海外業者を使った場合には国内を使った場合よりも計算方法が複雑になる点も懸念事項です。ここで紹介する業者は全て日本で登録・認可された業者のみです。
専業トレーダーが厳選した業者
Coincheck
Coincheck(コインチェック)のメリットとしては以下の点が挙げられます。
- Bitcoin(ビットコイン)取引所の現物手数料が無料
- APIで板情報取得や注文ができる
- 国内業者で最も多くの種類の通貨を購入できる
最近ではアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)もビットコインの価格変化に連動しないことが増えてきたことが保有動機となってきました。2021年2月後半のIOSTに対するトークンのエアドロップでは、ビットコイン価格が下がる中でIOSTが大きく上がったことは印象的でした。もっとも、アルトコインは販売所取引のみであり、実質的な手数料であるスプレッドが狭いとは言えない点に注意が必要です。
しかし、Coincheckにはデメリットもあります。
- 過去に大規模な流出事件の被害に遭った
- 他社に比べてサーバの不安定さを感じることが多い
- レバレッジ取引に対応していない
2018年1月、Coincheckから580億円相当のXEM(ネム)が流出しました。被害にあった顧客に対して損害額は補填されましたが、その流出した通貨のほとんどは違法なマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されたと見られており、社会通念上なかなか理解されないところがあります。流出事件以降はコールドウォレット利用や二段階認証導入により、セキュリティは格段に強固なものになりました。
また、サーバも不安定であり、市場の重要な局面でサーバが落ちている点は印象が良くありません。CoincheckではAWS(アマゾンのクラウドサーバ)を利用しているため、AWSの東京リージョンで不具合が起きると確実に巻き込まれ事故に遭います。またAWSの不具合が出ていない場面でもサーバが落ちて取引できない事がありました。チャートの研究をしながら取引していた時間帯に障害が起きたので、どの障害もとても鮮明に覚えています。私が認識している限り、以下の障害がありました。
- 2017年5月9日11:25頃から16:30頃まで
- 2021年2月19日23:05頃から2021年2月20日11:00頃まで(AWS障害が原因)
- 2021年2月22日21:50頃から2021年2月23日0:35頃まで
2017年5月の障害では価格表示が異常になり、障害が発生した時間までロールバックされるなど、利用者から不満の声が上がりました。2021年2月19日の障害はAWSが原因でしたが、予備となるバックアップ系統は存在しないことが浮き彫りになりました。さらに2021年2月22日も23:40ごろに不具合解消が一度アナウンスされたものの、依然として利用できない状態が続いていたなど、インフラの信頼性に大きな懸念が生じました。
【障害発生についてご報告】
— Coincheck(コインチェック) (@coincheckjp) May 9, 2017
先程Coincheckサービスに置いて正常はでない価格が表示される障害が発生致しました。該当時間に取引をされたご利用者様に関しましては、取引前の状態へ戻す可能性がございます。https://t.co/FyaAjTCTY1
【サービスの再開について】
— Coincheck(コインチェック) (@coincheckjp) February 20, 2021
AWS障害の影響をうけ、臨時メンテナンスを実施しておりましたが、現在は全てのサービスを通常通りご利用いただけます。この度は、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。https://t.co/5afR4aN7Bg
【解消】アクセスしにくい状況について
— Coincheck(コインチェック) (@coincheckjp) February 22, 2021
Coincheckへのアクセスしにくい状況は解消し、現在は通常通りご利用いただけます。この度はご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。https://t.co/XlqqzVWC2L
特に2021年2月19日〜22日はビットコインが10%近く上昇したのち、大きく下落したタイミングで、利用者からはかなりの非難が上がりました。
Coincheckは必ず口座開設しておきたい業者であることに変わりはありませんが、Coincheckのみに頼るのは危険です。そのため、次に紹介するLiquid by FTXも口座を開設してきたいところです。
Liquid by FTX
※Liquid by FTXは現在FTX JPに統合されておりサービスが終了しています。その後、FTX破綻に伴いFTX JPもサービス停止中。
Liquid by FTX(リキッドエフティーエックス)のメリットとしては以下の点が挙げられます。
- Bitcoin(ビットコイン)取引所の現物手数料が無料
- APIで板情報取得や注文ができる
- 日本円だけでなく外貨でも購入できる
Coincheckに並び必ず口座を持っておきたいのがLiquid by FTXです。国内業者では非常に珍しく外貨でもビットコインを購入することができるほか、国内最大級の月間取引高やスプレッドの狭さにも定評があります。
Liquid by QuoineはQUOINEX(コインエクスチェンジ)を前身としています(ちなみに現在ではコインエクスチェンジというと海外の別の取引所を指します)が、注目すべき点はシステム不具合に伴う緊急メンテナンス(2018年8月28日15:10〜15:24、および2018年8月29日17:50分〜8月30日2:45分にかけ発生)に関して、補償を発表するという異例の対応を実施した点です。断続的な緊急メンテナンスには利用者からの不満の声も上がっていましたが、個別の補償対応は業界の通例から見ても異例であり、誠実な対応だとしてユーザーから好感されています。Coinchekckではシステム障害が起きた時の損失を補償しないと明確に宣言しているのに比べれば、その差は歴然です。
【2018年8月28日及び2018年8月29日に発生したシステム障害およびそれに伴う緊急メンテナンスについて】弊社サービスQuoinexにて発生したシステム障害およびそれに伴う緊急メンテナンスの詳細及び対応方針について https://t.co/RoK9iRuwGF
— 【公式】Liquid by FTX(リキッドバイエフティーエックス) (@liquidbyftx) August 30, 2018
Liquid by FTXのデメリットとしては以下の点が挙げられます。
- アルトコインの取り扱いは少ない
- 入出金が若干遅い
- トークンであるQASHを使うと各種手数料は安いが、価格変動リスクがある
QASHの是非についてここでは議論しませんが、ビットコイン現物の自動取引だけであればほとんど気にすることもないため、あまり問題にはならないと考えられます。
それなりの金額で取引をするのであれば、先に紹介したCoincheckと合わせて必ず口座開設をしておきたい業者のひとつです。
bitbank
もしアルトコインの取引をするなら、おすすめはbitbank。メリットとしては以下の点が挙げられます。
- Maker手数料がマイナス
- 取引所が使えるアルトコインの種類が豊富
- 国内業者初、板取引で逆指値注文にも対応
bitbankの特筆すべき点はMaker手数料がマイナスという点です。
Maker手数料とは、取引所において流動性を増加させる際の取引手数料であり、ざっくり言えば指値取引で順番に並ぶ注文が該当します。通常であれば取引した際に手数料を支払わなければなりませんが、bitbankではMaker取引の際には手数料として受け取ることが可能です。その手数料は-0.02%ですが、一般的な手数料が0.05〜0.2%程度であることがほとんどであることを考えれば、かなり魅力的です。
その上、種類豊富なアルトコインで板取引ができる点も大きく評価できます。国内業者ではアルトコインが販売所取引、つまり業者と相対で取引することが一般的ですが、こちらはスプレッドが非常に広く、手数料無料を謳っておきながら実質的にかなり損します。ちなみに先に紹介したCoincheckの販売所取引ではこのスプレッドが約5%程度であり、ざっくり言えば買いと売りで一往復すると5%損をします。
bitbankのデメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 画面での注文が通らないことがある
- 入出金が若干遅い
- レバレッジ取引は対応していない
CoincheckやLiquid by Quoineと比べると、画面からの注文が通らないことや注文キャンセルが上手く効かないことが多いように感じます。これは相場の変動が大きい時に特に顕著であり、機会損失の原因となります。とは言え、bitbankで取引する大きな理由はマイナスのMaker手数料であり必要に応じてあらかじめ指値注文を入れておくでしょうから、あまり気にならないとも言えます。
アルトコインにそれほど興味がなくてもイーサリアムだけはその将来性から保有したいという方は、必ず口座開設をしておきたい業者と言えますね。
Coinbase
※Coinbaseは2023年1月に日本市場からの撤退を発表し、日本居住者は使用できない取引所です。使える取引所が徐々に減っていきますね。
アルトコインの取引でもうひとつおすすめしたいのがCoinbase。米国の仮想通貨取引所として超有名なCoinbaseは2021年に突如日本で登録・認可され、サービスを提供しはじめました。
注目すべき点は、日本で正式に認可された仮想通貨取引所で数少ない、Sol/Solanaが取引できる取引所という点です。Sol/Solanaはイーサリアムキラーとして有望視されているレイヤー1のトークンであり、多くのプロジェクトを抱えている人気の通貨です。日本の他の取引所では取り扱いがないため、選択肢は事実上ありません。
Sol/Solanaは仮想通貨界の「炭鉱のカナリア」と言われることもあり、注目しておきたい通貨のひとつと言えますね。
bitFlyer
bitFlyer(ビットフライヤー)は先ほど紹介したCoincheck、bitbankと比べると選ぶ軸が若干異なります。bitFlyerのメリットとしては以下の点が挙げられます。
- ビットコインのレバレッジ取引が可能
- APIで板情報取得や注文ができる
- 信頼性が高い
実は、国内業者ではレバレッジ取引が可能かつ実用的なAPIを提供しているところが少なく、bitFlyerは数少ない両方の条件を揃えている業者です。
また、bitFlyerではセキュリティ対策を厳重に行っており、ネットワーク、ログイン、マルチシグ、インフラ、プログラムなどあらゆる箇所に対策を施しています。bitflyerではこれまで仮想通貨の流出やハッキング被害に遭ったことはなく、安心して使い続けられる国内業者のひとつと言えます。
デメリットとしては以下の点があげられます。
- 売買の手数料が若干気になる
- 取引量が多い時にはサーバが重くなることがある
ビットコインの現物取引のみであればCoincheckに軍配が上がりますが、レバレッジ取引を行うのであればbitFlyerもぜひ口座開設しておきたい業者です。
なお、国内業者では法規制により最大レバレッジの制限が厳しくなり、bitFlyerでは2021年2月中旬以降に最大レバレッジが2倍となります。情報が更新されていない古いサイトには注意しましょう。
ここまでおすすめの業者を紹介してきました。暗号資産(仮想通貨)はボラティリティが高く、短期のトレーディングで収益を上げやすいというメリットがあります。これを機に口座を開設し、取引を始めてみてはいかがでしょうか?