投資する価値のある国内ETFはどれか?投資対象のカテゴリー毎に比較してみる

株式・債券

「国内ETFを使って長期投資を検討しているのですが、どうなんでしょう?」

この質問に正確に答えられる方はなかなかいらっしゃらないと思います。たしかに投資初心者の方には投資信託をおすすめしているのですが、国内ETFを使って投資する方がいいこともあるのでしょうか?

この記事では、長年投資を行ってきた筆者が国内ETFへの投資の是非や、投資する価値があると考えられる銘柄を紹介します。

ETF vs 投資信託

株式投資には様々な方法があります。個別株式を選ぶ手間を嫌う一般の投資家にとって、ファンド形式で購入できる投資商品は有力な選択肢となるでしょう。ここ10年以上、インデックス型のファンドが圧倒的に選ばれており、投資するのであればETF(上場投資信託)か投資信託が選択肢となります。

投資信託と比較してみるとETFのメリットは「日中に板で取引できる」「信託報酬が低い」「優良ファンドでも分配金を受け取れる」点にあります。3点目の分配金受領に関するメリットは一見すると魅力ですが、再投資で購入した資産については課税されるため投資効率が劣るというデメリットにもつながります。ただし非課税口座で保有する分には分配金も非課税ですから、分配金を手元に残すか別途再投資するか選択できる点はメリットであるとも言えます。

一方、投資信託のメリットは「つみたて投資を自動設定できる」「分配金再投資が自動で行える」点にあります。といっても2点目の分配金再投資については優良な投資信託であれば分配自体が行われないため、メリットとしては薄いでしょう。

国内ETFと海外ETF

ここまではっきり明示していませんでしたが、ここでいう国内ETFとは「ファンド籍が日本のファンド」を指します。実は、国内ETFは「日本で上場しているETF」とイコールではありません。例えば、ステートストリートが出しているS&P500に連動するETF(1557)は日本に上場している海外ETFという位置づけです。そして、国内ETFと海外ETFでは「二重課税回避のための申告の手間」が異なります。

2020年1月の税制改正まで、外国資産に投資を行い、そこから生じた利益をもとに分配金を支払っている投資信託及びETFは、現地で分配金に対して外国税10%が天引きされ、さらに日本でも配当課税(当時20.315%)が引かれる、いわゆる二重課税の状態になっていました。確定申告で外国税額控除を行えば現地の課税分を取り戻すことができましたが、かなりの手間がかかります。

2020年1月からは、外国税が引かれている前提で国内の配当課税を計算するように改正されたのです。といっても、この改正は国内の外国株ETF・外国債券ETFが対象になっており、国内で上場する海外ETFは対象となっていません。後者は確定申告しなければ二重課税状態のままです。また、先ほど例に出したファンド籍が海外で日本で上場しているファンドは、後者にあたります。

つまり、海外ETFに対する国内ETFのメリットは、面倒な確定申告をしなくても二重課税を自動的に回避できるという点にあります。

なお、投資信託では優良ファンドはいずれも日本籍ファンドであり、何もしなくても二重課税が回避できるようになっています。

ここからはそれぞれの資産クラスにおいて投資する価値のある国内ETFを考えてみます。

国内株式

国内株式カテゴリーは投資信託との比較という観点で、信託報酬についてはETFの方が低く、非課税口座(NISA)で保有するならETFでの投資のメリットが大きいです。(積立NISA・iDeCoではETFが対象外です。)逆に、分配金を100%再投資することを考えるなら、ファンド内で分配金を再投資できる投資信託の方が長期的にはリターンが高くなりやすい特徴があります。

TOPIX:iシェアーズ・コア TOPIX ETF(1475)

日本の株価指数の代表であるTOPIXに連動するETFで、信託報酬は0.06%(税込0.066%)。ファンドの決算日は毎年2月9日および8月9日で、分配金は年2回。TOPIXは東証一部に上場している全銘柄から構成される指数(インデックス)です。国内株式市場全体を表すインデックスとして、日本経済全体の動向を見る指標としても使われます。

もし分配金が年2回では満足できないという方は、iFreeETF TOPIX(年4回決算型)(2625)は信託報酬が0.06%(税込0.066%)となっており、こちらを選択してもよいでしょう。

日経平均株価:iシェアーズ・コア 日経225 ETF(1329)

日本の株価指数の代表として有名な日経平均株価指数に連動するETFで、信託報酬は0.105%(税込0.1155%)。ファンドの決算日は毎年2月9日および8月9日で、分配金は年2回。日経平均株価とは、日本経済新聞社が東証一部に上場する企業の中から業種等のバランスを考慮して選んだ、日本を代表する企業225社から構成される指数(インデックス)です。「日経225」「日経平均」と呼ばれることもあります。

TOPIXなど通常の株価指数が時価総額加重平均という企業の時価総額で調整した算出を行っているのに対して、日経平均株価はその名の通り「構成銘柄の株価の単純平均」となっています。そのため、少数の値がさ株の影響を受けやすいという特徴があります。

こちらも、もし分配金が年2回では満足できないという方は、iFreeETF 日経225(年4回決算型)(2624)は信託報酬が0.1%(税込0.11%)となっており、こちらを選択してもよいでしょう。

JPX日経400:MAXIS JPX日経インデックス400上場投信(1593)

最近登場したJPX日経400指数に連動するETFで、信託報酬は0.078%(税込0.0858%)。ファンドの決算日は毎年1月16日および7月16日で、分配金は年2回。JPX日経400とは、東証と日本経済新聞社が資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした企業の銘柄から構成される指数(インデックス)です。

東証一部に上場していてTOPIXに組み入れられていてもイマイチな企業がある、日経平均株価は極少数の値がさ株の動きに左右されすぎるという欠点を克服したインデックスであり、「投資家にとって投資魅力の高い会社」が組み入れられているという特徴があります。

国内債券

国内債券でのETF活用のメリットは国内株式(日本株)と同じであり、信託報酬で比較すればETFの方が低く、非課税口座で保有するならETFでの投資のメリットも大きいです。特に、国内債券はリターンが安定してリスクが低いものの、その分コストとなる信託報酬によりリターンの大半をもっていかれやすいというのがポイントです。そのため、債券は株式以上にコスト(信託報酬等)を考慮することが重要です。

日本国債:iシェアーズ・コア 日本国債 ETF(2561)

FTSE日本国債インデックスに連動するETFで、信託報酬は0.06%(税込0.066%)。ファンドの決算日は毎年1月11日・4月11日・7月11日および10月11日で、分配金は年4回。FTSE日本国債インデックスとは、FTSE世界国債インデックスのうち日本国債部分の銘柄から構成される株価指数(インデックス)です。

日本銀行の保有分および財務省償還分を除いた、償還残存期間1年以上の日本国債を時価総額で加重平均した債券インデックスであり、平均残存年数は13年前後、実効デュレーションは12年超と、長期国債寄りのETFです。

信託報酬が低いように見えますが、もともと日本は超低金利下にあることもあり利回りはかなり低いです。

国内公社債:NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信(2510)

NOMURA-BPI総合インデックスに連動するETFで、信託報酬は0.12%(税込0.132%)。ファンドの決算日は毎年3月7日および9月7日で、分配金は年2回。NOMURA-BPI総合インデックスとは、日本の公社債(国債や社債など)市場の動向を表す代表的な指数(インデックス)であり、インカムゲインを考慮した時価総額加重平均で算出されます。

公社債の内訳は、日本国債が約80%を占めており、続いて地方債が約7%、政府保証債が約3%で、社債は約7%(金融債と事業債)となっています。平均デュレーションは9年前後。

国内債券(円建外債含む)が投資対象のためリターンは比較的安定していますが、金利の水準が低いため利回りはやはり低いです。

海外株式

海外株式に連動する国内ETFを選ぶ意義は最初にも紹介した通り「二重課税回避のための手間が少ない」点にあります。そもそも海外ETFには信託報酬が低い銘柄が多く、コストという面で信託報酬で肩を並べる銘柄は少ないため、本当に投資する価値のある銘柄を厳選して紹介します。投資信託でなくETFを選ぶメリットは国内株式ETFと同様です。

S&P500:上場インデックスファンド米国株式(S&P500)(1547)

米国のS&P500インデックスに連動するETFで、信託報酬は0.06%(税込0.066%)。ファンドの決算日は毎年1月20日で、分配金は年1回。S&P500インデックスとは「ニューヨーク証券取引所」「NYSE American」「NASDAQ」に上場している米国の大企業500銘柄の時価総額を元に算出される指数(インデックス)です。米国企業の時価総額の80%を占めているインデックスであり、日本人の米国株への投資でも人気があります。

海外ETFに目を向ければ、バンガード社の「VOO」が信託報酬0.03%であり、国内ETFの方がコストは高いですがもともと信託報酬の水準が低く、国内ETFは日本円で買い付けできるためETF購入時の為替手数料を払わなくていいというメリットはあります。

なお信託報酬が同じ銘柄にステートストリートの「SPDR S&P500 ETF(1557)」がありますが、こちらは最初に紹介したように日本へ上場する海外ETFのため注意してください。

S&P500:MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558)

先ほどの1547と同様、米国のS&P500インデックスに連動するETFで、信託報酬は0.07%(税込0.077%)。ファンドの決算日は6月/12月の8日で、分配金は年2回。

コストは1547より若干高いですがほとんど気にならないレベルと思いがちですが、実は1547は投資対象となる証券としてETFにすることがあり、その信託報酬は0.09%(税込0.099%)であるため、実質的な負担は最大0.15%(税込0.165%)のため、2558の方がコストは低いです。2022年末時点で1547は1口5,585円である一方、こちらの2558は14,615円となっており、少額買付は1547の方が手軽ですが、2558も積み立て投資できないほどではありません。

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全世界株式:MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(2559)

MSCI・オールカントリー・ワールド・インデックスに連動するETFで、信託報酬は0.078%(税込0.0858%)。ファンドの決算日は毎年6月8日および12月8日で、分配金は年2回。MSCI・オールカントリー・ワールド・インデックスとは日本を含む先進国と新興国の大型株・中型株から構成される指数(インデックス)です。全世界で投資可能な時価総額の約80%を占めており、全世界株式の投資として人気があります。

投資対象が似ている海外ETFとしては、バンガード社「VT」が信託報酬0.08%であり、コストでは海外ETFに引けをとりません。ただし連動するインデックスが異なっており、2559は大型・中型株のみである一方、VTは小型株も含むという違いがあります。また先進国・新興国の定義に微妙な差があり、組み入れのある構成国に僅かに差があります。

なお2559は、三菱UFJ国際投信が出している超優良投資信託「eMAXIS Slim」のオール・カントリー(通称オルカン)と同じインデックスに連動しています。オルカンは信託報酬が0.104%(税込0.1144%)以下で設定されており、信託報酬はオルカンよりも2559の方が低いという明確なメリットがあります。

海外債券

海外債券に連動する国内ETFを選ぶ意義は海外株式インデックスETFと同様です。ただし、海外債券でコストがある程度より低い国内ETFは投資対象が国債のみですので、社債を選びたい場合には海外ETFを選ぶ必要があります。

米国国債(7-10年):MAXIS 米国国債7-10年 上場投信(為替ヘッジなし)(2838)

S&P米国債7-10年指数(円換算ベース)に連動するETFで、信託報酬は0.12%(税込0.132%)。ファンドの決算日は毎年2月10日・5月10日・8月10日および11月10日で、分配金は年4回。長期の米国国債に連動するという特徴があります。日本国債に比べれば米国国債は利率が高いため、根強い人気があります。こちらは為替ヘッジなしですが、為替ヘッジあり版の2839もあります。

一般的に株式と債券に分散するべきといわれるとき、米国株式と相関が低くなるのは長期国債です。その意味で株式投資で人気なS&P500連動型と相補的な位置付けで投資先としやすいです。ただし、相関が低くなるのは米ドルベースで見たときであり、米ドル円の為替リスクまで考慮すると市場の混乱時に円高リスクがあるため注意が必要です。

米国国債(20年以上):iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)(2621)

FTSE米国債20年超セレクト・インデックス(国内投信用円ヘッジ円ベース)に連動するETFで、信託報酬は0.14%(税込0.154%)。ファンドの決算日は毎年1月11日・4月11日・7月11日および10月11日で、分配金は年4回。超長期の米国国債に連動し、かつ対円で為替ヘッジを行うという特徴があります。日本国債に比べれば米国国債は利率が高いため、根強い人気があります。

投資対象が似ている海外ETFとしては、同じブラックロックの「TLT」が信託報酬0.14%であり、コストでは海外ETFに引けをとりません。ただしTLTは米ドル建てである一方、2621は対円の為替ヘッジがあるためファンド運用に伴う実質的なコストはやや高くなります。年限が長いために利回りは一般的には高くなりやすく、「米国債券へ投資し、円ベースで安定的な利回りを狙いたい」という方には投資価値があると考えます。

ただし、為替ヘッジを行うためには追加的なコストが必要となり投資利回りを押し下げる影響があるため、個人的には為替ヘッジつきの商品はあまりおすすめしていません。

世界国債:NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)(2511)

FTSE世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)に連動するETFで、信託報酬は0.12%(税込0.132%)。ファンドの決算日は毎年3月7日および9月7日で、分配金は年2回。先進国の国債に投資するインデックスであり、日本に比べれば海外は利率が高い国が多く、投資対象の国を分散できる特徴があります。

投資対象から日本を除いている点がポイントであり、海外ETFのメジャー銘柄であえて日本を除く運用を行なっているものはありません。米国居住者向けの一般的な海外ETFで「米国除く」という商品は多いんですけどね。

2511は為替ヘッジがないため為替変動の影響を大きく受けますが、信託報酬が同じで為替ヘッジを行う以外は同様の運用を行う2512は為替変動の影響をおさえられるため、好みに応じてどちらかを選ぶと良いかなと思います。

ここで紹介した国内ETFを買うためには?

ここで紹介した国内ETFを買うためには、証券口座が必要になります。国内ETFはほとんどの証券会社で購入することができますが、そのサービスについては証券会社ごとに大きく異なります。楽天証券では、ポイントを使ってETFを買い付けることも可能です。まだ証券口座を持っていないという方は、まずは楽天証券で口座開設しましょう。

まとめ

この記事では投資する価値のある優良な国内ETFを紹介しました。

世の中には様々なファンドがある中、本当に投資する価値のある商品は非常に限られており、その中でもインデックス型のETFはかなり優良な投資商品です。みなさまには長期投資にETFを活用していただくことで、資産形成の実現に少しでもお役に立てれば幸いです。