指値オペって何?知っておきたい日銀の金融政策

マネー論

日銀の指値オペによる円安が話題ですが、実際のところ指値オペについてよくわからないという方も多いのではないでしょうか?

ここでは指値オペについて紹介してみます。

連続指値オペに至るまでの経緯

日本では実質的な物価の上昇を伴わないまま、長い停滞を続けています。そんな中でも着実に国内の長期金利は上昇していきます。

2022年2月10日には日本の10年金利は0.231%まで上昇し、2016年1月29日のマイナス金利導入決定直前の水準になりました。これを受けて日銀は10日夕方、3連休明けの14日に「指値オペ」を実施することを通知。その後も必要に応じて指値オペを続け、金利上昇を食い止めようとします。海外は金融引き締めに向かっている中ですから、金利格差から円安がどんどん進行していきます。

そんな中、2022年3月28日、日本の長期金利(10年)が政策目標の0.25%を上回る勢いであったため、連続指値オペの実施が公表されたことでドル円の為替レートが1ドル125円台まで急騰し、6年7か月ぶりの円安水準となったことが大きな波紋を呼びました。

連続指値オペとは2021年3月に導入された新しい措置で、今回が初めての実施です。実質無制限の国債買い入れを行うで、なんとしてでも金利上昇をとめたいという日銀の意図が透いて見えますね。

しかし、無制限の国債買い入れなんて行っても大丈夫なのでしょうか?

なお円安の弊害についてはこちらの記事でも紹介しています。

悪い円安とは何か?理解しておきたい円相場
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日銀の金融政策の目的

そもそも、日銀の金融政策の目的は「物価の安定」と「金融システムの安定」の大きく2つがあります。後者は主に「銀行のための銀行」という役割であり、マーケットへの影響という意味では前者の方が重要と言えるでしょう。

物価安定:日本銀行の金融政策の目的は、物価の安定を図ることにあります。 物価の安定は、経済が安定的かつ持続的成長を遂げていくうえで不可欠な基盤であり、日本銀行はこれを通じて国民経済の健全な発展に貢献するという役割を担っています。

参考:日本銀行法第1条第1項、第2条

物価と金利の間には非常に密接な関係があり、一般的に金利の上昇は物価を押し下げる効果があります。

実質的な物価の上昇が長らく見られない日本はデフレ下にあると言われており、日銀は物価の安定的な上昇、具体的には年2%程度を目標としています。

日本の物価をあげたいがために、金利上昇を防ぐことに必死というわけですね。

指値オペとは?

指値オペとは、国債がある基準となる価格に到達したら日銀が買い入れるという仕組みです。

債券の世界では価格そのものよりも利回り(つまり金利)が注目されており、今回の連続指値オペは0.25%で買い付けるというものでした。

日銀が国債を買い付けることで国債の価格が上昇し、これは利回りの低下と同じ意味です。つまり金利が低下するのです。

日銀が国債を買い入れ続けても問題ないのか?

日銀の指値オペは1日におよそ数千億円も買い付けているのですが、これほど買い続けても問題ないのでしょうか?

実は仕組み上は問題ありません。極端に言えば日銀はお金を刷ることができるのですから、足りなくなればいつでもお金を刷って債券を買い入れ続けることができます。

むしろ問題なのは買い入れにより保有している国債の方です。

実は日銀が保有している国債は償却原価法により評価されています。そのため金利が上がるつまり債券の価格が下がっても評価損は計上されません。

しかし、現代の会計学の観点からは、債券は本来時価会計を適用するべきところであり、金利が上がることで日銀の保有している国債で計上される評価損は本来ものすごく巨額なはずなのです。

実際には年度末時点での評価損益は政府に報告しているので、問題ないとも言えるのですが、金利を下げたい要因のひとつがこの評価損を減らしたいと思われても仕方のないところでしょう。

(おわり)

三井住友信託銀行マーケット事業(著)