資産形成に必要なもの、資産を増やせる人とそうでない人の違いは何なのか──。
専業トレーダーはリッチだという幻想があるせいか、とてもよく質問されます。
確かに、私は一般の方よりもマネーリテラシーがあると自負しています。しかし、それは専業トレーダーだからではなく、例えばFP(ファイナンシャル・プランニング)や簿記、証券アナリストなどの資格試験を通して色々なことを勉強して学んだところが大きいです。もちろん、専業トレーダーとして学んだこともたくさんあります。
この記事では、そんな私が個人の資産形成について本気で考えてみたことをお話ししていきましょう。
資産形成が実現した状態とは?
私はシンプルなことが好きなので、まずは「資産形成が実現した」とはどのような状態なのか、という結果から考えるようにしましょう。ゴールが明快でわかりやすいですよね。
私が考えるに、その状態とはそれから10年以上の生活をするのに困らない資産を築き、資産が更なる資産を増やす仕組みができているというものです。5年では短いし、20年分の資産は結構な金額で目標が高いです。また、貯金などでお金を貯めたとしても使って取り崩すだけでは、そう遠くない時間で使い切ることになります。仕事で稼げる金額は大体決まっていますから、ある程度の規模から資産を増やすなら、資産が資産を増やすという仕組みを作ることが大事です。
- 10年以上の生活をするのに困らない資産をもつ
- 資産が資産を増やす仕組みを作る
では、どのくらいの規模なら10年分の生活ができるでしょう?もちろん家族の人数や、都会に住むか地方に住むか、月にどれくらい生活費がかかるかは人により異なります。ここではシンプルに毎月20万円かかるとしましょう。この金額は多いことはあっても贅沢しなければ決して少なくはないと思います。そうすると、10年分の生活できる金額は2,400万円となります。
また、資産が資産を増やすとはどのような仕組みでしょう?例えば銀行口座への預金も、利息がつくので資産を増やすと言えなくもないです。残念ながら日本は超低金利な状態にあり、普通預金どころか定期預金でも利息で資産が増えることは期待できません。また、一般的に安全な投資と言える国債(国が発行する債券)の購入も、利回りはせいぜい0.05%程度です。
消去法的になりますが、資産が資産を増やす仕組みとは「投資」に他なりません。しかも債券では資産価値の上昇速度が遅いがために、経済成長の恩恵を受けられる株式への投資が必要なります。
「株式もそうだけど、そもそも投資はしたくない!」という方は、ここからの記事を適宜飛ばしながら読んでください。貯金でもある程度の蓄えを用意することはできます。しかし、投資した場合と同じくらいの資産を貯金だけで築くには、並み大抵の努力ではまず難しい、ということは認識しておいてください。
資産を増やすためのメカニズム

「資産を増やすにはどうすれば良いか?」という疑問にはたくさんの答えがあり、どれが良い方法なのかをよく吟味しなければわかりません。
しかし「資産が増えるメカニズムは?」という問いに対する答えは非常にシンプルで、他の答えはありえません。それは次に示した式の通りです。
資産の増加量 = 収入 - 支出 + (資産 × 投資利回り)
収入と支出について今さら説明するまでもないでしょう。(資産 × 投資利回り)だけは少し説明します。もしこれが銀行預金であれば、預金金額 * 利率と同じです。例えば預金が100万円あって銀行預金の利率を0.001%とすれば、100万円 × 0.001% = 10円です。(ちなみに、ここからさらに税金が引かれます。)
これがもし株式の配当であれば、例えば100万円分株式を保有して配当利回りが3%なら、税金を無視すれば、100万円 × 3% = 3万円です。しかも、株式を購入した時は100万円かもしれませんが、経済成長とともに企業価値が上がり株価が上がれば、120万円あるいはもっと高い価格で株式を売却することができるかもしれませんね。端的に言えば、これが資産を増やしたいなら投資をせよという説明になります。
まずは収入と支出に注目せよ

投資をしようとしても元手がなければできません。ではその元手をどう用意するかと言えば、それは収入の一部を投資に回すほかありません。もちろん生活にかかる費用のために一程度の支出はあるでしょうが、支出をおさえることができれば投資に回せる金額は大きくなり、資産増加のスピードを早められる可能性が高くなります。そのため、まずは収入と支出に注目するのが第一歩です。
ここでいう収入とは、労働の対価としての賃金を指します。投資を始めると勘違いする人が増えてくるのですが、投資の収益を生計のための収入と考えてはいけません。なぜなら、そもそも投資とは余裕資金で行うものであり、生活に必要な支出をまかなうための収入が投資のみに依存するのは危険です。生活のための支出を投資の結果に依存させていいのは覚悟のある専業トレーダーだけです。専業トレーダーですら、投資収益(ときには投資の元手)の一部を切り崩して生活費に充てているだけです。
残念ながら、収入を増やすための妙案はありません。今の仕事が給料に見合わないなら転職するだとか、空いた時間に副業(もちろん投資以外のもの)をするだとか、せいぜいそんな感じでしょう。もしかするとポイントサイト巡り(いわゆるポイ活)もよいかもしれません。
収入を改善することに比べれば、支出を見直し減らすことはそれほど難しくありません。支出を減らすには様々な方法があります。

さぁ投資だ、でもどうすれば?
生活資金以外にお金の余裕が出てきたら、いよいよ投資してみます。「でも投資って言っても色々あるんでしょ?」という方、その通りです。投資には様々なものもあり、中には買ってはいけない投資商品も数多くあります。
ここでは、誰でも着実に資産形成できる、長期での積立投資をおすすめしておきましょう。
長期投資のススメ

積立投資とは、決まったタイミングで決まった金額分だけ投資商品を購入するというものです。例えば、優良なインデックス型の投資信託を毎月2万円買い続けるというものです。
積立投資では、相場の上げ下げがあっても同じ金額で買い続け、保有している投資資産を持ち続け必要な資産額になるまでは絶対に売らないということがポイントです。よく、相場が大きく下がると保有資産を狼狽売りしてしまったり、積立の買付金額を減らしてしまうという方がいますが、それはこの上ない悪手です。
大局的に見れば、株式市場は世界経済が成長する恩恵を受け続けられます。つまり一時的に市場が下がってしまったとしても、長期で見れば回復し資産額が投資元本を上回ることが期待されます。また、大きな下落からの回復は短期間のうちに極端な上昇で生じます。これをとり逃して狼狽売りにより売却損を確定してしまうと、資産価値を元に戻すことは容易ではありません。
また、一定の買付金額を維持するというのも重要です。市場は絶えず上がったり下がったりし続けるため、「どのタイミングで買えば一番効率的なのか?」は投資のプロでも読めません。しかし、定期的に一定額を買い続けていれば、相場が上がって高値の時には数量は少なく、相場が下がって安値の時には数量は多く購入できる、つまり時間分散により極端なタイミングの失敗を免れることができるのです。
おすすめは「つみたてNISA」+「ネット証券」!

この記事を読んでいる方の中には、「つみたてNISA」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。つみたてNISAとは、長期の積立・分散投資を通じた資産形成を後押しするために創設された税制優遇制度です。そもそも、積立投資に限らず投資全般で得られた利益には税金が発生します。つみたてNISA期間中、買い付けた資産については時価変動部分については税金が発生しない、平たく言えば課税される税金が免除されることで優遇となるのです。
「つみたてNISA」の上限は年間40万円で、毎月の積立額は1,000円から33,000円の間、1,000円単位で設定できます。
つみたてNISAを始めるにも証券会社で口座を開設することが必要になります。実は、証券会社選びも大事なポイントです。
証券会社は数多くあるのですが、投資初心者におすすめなのがネット証券です。口座開設や口座維持が無料で、クレジットカードを使った積立投資ならポイントも貯まり、シンプルで使いやすいということでおすすめです。
その中でもおすすめは楽天証券です。楽天証券では投資信託の積立投資(つみたてNISAを含む)に楽天クレジットカード払いを選択できます。上限は月5万円ですが、楽天クレジットカードで支払うことで、なんと楽天ポイントが1%を付与されます。クレジットカード払いできる証券会社は先に紹介したSBI証券など他にもあるのですが、ポイントの付与率1%は他社を圧倒しています。またマネーブリッジを利用することで普通預金の金利が0.1%(※一定金額まで)となり、一般的な銀行の普通金利と比べ100倍以上にもなるため、これを使わない手はありません。
もう一社候補を挙げるなら同じくネット証券で最大手のSBI証券です。つみたてNISAの利用はもちろん、先物やオプションなど様々な資産への投資が可能。中級者以上の長期投資におすすめな海外ETFについても一部の人気銘柄で購入手数料が無料であるなど、利用者にとってメリットの大きい証券会社です。積立投資に三井住友カードを使うことでVポイントをゲットできる点も魅力です。
おすすめの投資商品は?

つみたてNISAで投資できる商品は、国が選んだそれなりに優秀なものが揃っています。しかし、その中でもコストには差があり、まずは最もコストの低いファンドを選ぶべきです。投資の世界ではコストが高いから利益が高いということは絶対にありません。
投資初心者の方へおすすめなのは三菱UFJ国際投信の提供する投資信託「eMAXIS Slim」シリーズです。投資対象を全世界株式にしたいなら「オール・カントリー」、米国株のみにしたいなら「S&P500」を選ぶと良いでしょう。
投資信託の主なコストのひとつである信託報酬だけ見れば、もっと信託報酬が低いように見える投資信託ファンドはあるのですが、そのようなファンドは中身が他社ETFへ投資しているなど、目に見えないコストが存在するため比較することは案外難しいです。ここではそのようなETFを使った投資信託ファンドのデメリットについて紹介しませんが、個人的にはあまりおすすめできません。
投資に自信のある方は海外ETFも検討してみるとよいでしょう。

まとめ
時代の流行りとして特定のライフスタイルが話題になることはあります。しかし、流行に流されることなく自分の軸を持つことが資産形成には一番重要です。残念ながら資産形成のために早道はありませんが、着実に続けていけば決して実現できないものではありません。
皆さんには正しい資産形成の方法を理解いただき、自分の生活をより良いものにしていけるようにと願っております。