クレディスイス経営危機は第二のリーマンショックを招くのか?結論:ならない

トレード

久しぶりに相場が大きく動いているため、ブログを更新してみます。

マーケットの反応

まどろっこしいファンダメンタルズ的な話は後で行うとして、まずはマーケットの反応を見てみましょう。

マーケットのヒートマップ
Google Financeのデータより独自に作成

少しだけ注釈をつけてみる。なおGoogle Financeで簡単にとれるデータのみのため、「重複している!!」とか「網羅してない!!」とかの文句は受け付けません。

マーケットのヒートマップ
Google Financeのデータより独自に作成

2006年以降の週次騰落率(前週金曜〜当週金曜)を可視化してみました。画像が小さくて恐縮ですが、横軸が時系列、縦が各指標で大まかに上から債券、株価指数、コモディティ、為替をプロットしています。赤が上昇、青が下落という色付け。定量の世界では割とよく見かけるヒートマップです。

なので、一番右端が直近(3/10-3/17)の動きです。

色が濃いほど動きが大きいことを表しており、一番右端の直近くらいの変動は長い目でみるとたまに発生していることがわかります。

2008年9月のリーマンブラザーズ破綻やコロナショックのときの下落は極端すぎるというのはありますが。

ちなみにこの調査で騰落率が最も近い週は2020/7/24〜31の週でした。(リターン格差の二乗和で算出)

クレディスイスで何が起きているのか?経済への影響は?

一言でいえば、クレディスイスは破綻の危機です。金融市場を通して経済全体への影響に対する懸念がくすぶっています。しかし私のスタンスは比較的楽観的です。その理由は以下の通り。

  • 個別要因であること:クレディスイスは預かり資産の流出がもともと続いていた。そこにアルケゴス破綻による損失発生。そこにSVB破綻影響によるさらなる預金流出。
  • Too Big to Fail
  • 株価が表す通り、マーケットは既にそれなりの評価をしていた。ついでにCDSスプレッドも3/17時点で破綻をほぼ折り込み。

私は何らかの公的救済や投資家の痛みを伴う救済が生じることで、不安は払拭されると考えます。もちろんこれに対する反論もあります。

  • 金融機関の決済機能に影響が出る。
  • Too Big to Be Saved
  • 資本性証券への不信感によるリファイナンス懸念

クレディスイスにはいくつかのビジネスを展開していますが、(クレディスイスにとって)オワコンのビジネスはまず切り離され、決済機能としてのクレディスイスは救済されるでしょう。

潰すことはできないと言いますが、仮にもG-SIBsであるクレディスイスを完全に破綻させることは世界の金融機関の管理不全を表すため、当局はそうならないよう最大限の調整を行うでしょう。

残念ながら資本性証券については不信感が生じることがまぬがれられないと思います。CoCo債、特にAT1債はCET1またはPoNVいずれかのトリガーに抵触すると株式転換ないし元本削減されることになります。今のクレディスイスの状況では、いずれかのトリガーに抵触することは確実でしょう。

段階的にはまず利払い停止が生じますが、現代の金融機関への統制の中でAT1の利払い停止自体が稀有なケースです。大なり小なり混乱が生じることは2016年のドイツ銀行のAT1利払いへの懸念からも容易に想像できます。

当局および関係者はこの週末で何らかの調整を画策していることは明らかです。ただでさえインフレ対応のための金融引き締め・利上げのフェーズの中で、大規模な救済はすなわち緩和的対応を意味しており、ここ1年の中央銀行の物価対策への努力は泡に消えます。大混乱が生じ金融市場全体への大規模対応が必要となる間際の、スピーディーな対応が必達なのです。

その混乱は欧州だけでなく、SVB破綻の震源地である米国も同様です。クレディスイスほどの大きな金融機関が破綻すれば、米国でも、という話が当然出てきます。

このように大きな動きが予想される日本時間の20日(月)の朝時点、どのようなヘッドラインが出ているか目を逃すことができません。

そういえばドイツ銀行ショックのときも「第二のリーマンショック」を連呼する人たちがいたなぁ。ちなみにリーマンショックは和製英語で海外ではthe global financial crisisという呼び方が一般的。第二のリーマンショックを唱える人は「リーマンショックおじさん」と呼ばれます。

(当記事は過去の経緯等を加筆修正していきます。後から見直すと割と当たっていますね)