各国の中央銀行が金融緩和引き締めに向かっている折、2022年の株式市場全体で大きく下落しました。
金利が大幅に上昇している中、今後どのようにマーケットが動くかはとても気になるところですね。
この記事では、現在誰もが注目している材料やマーケットで直接観測できる指標をもとに、今後のマーケットの動きを考えてみます。
※当記事の情報をもとに投資を行い、発生した損失について当方では責任を負いません。
2022年は予想できる範囲の中で「予想外」だった?
2023年の展望を見る前に、簡単に2022年を簡単に振り返っておきましょう。
- 1/5 2021年12月FOMC議事録の開示、利上げと資産買い入れ縮小など「予想以上の」タカ派色が鮮明になり、米国株式市場の下落開始
- 1/20 アフター、$NFLXの決算が芳しくなく、大きく下落、GAFAMも$MSFT除き業績懸念
- 2/24 ロシアによるウクライナ侵攻開始、資源価格急騰の起点となる
- 4/20 日銀が国債の無制限買い入れ(無限指値オペ)を公表、急速なドル買い円売りが始める
- 9/22 午後5時ごろ、ドル円が145円後半をつけたところで日銀がドル売り円買いの為替介入
- 9/23 英国トラス新政権が23日に打ち出した大幅な減税を柱とする経済対策が嫌気され、英国長期債・英国株式・ポンドが急落、特にポンド円はドル円介入もあり9/22は164円台から9/26には149円台を割れる
- 10/21 午後11時40分ごろ、ドル円が151円後半をつけたところで日銀がドル売り円買いの為替介入
2022年を一言で言えば「各国金融政策見通しの甘さが招いた市場の混乱」と言えます。2021年夏に行われたジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が「インフレは一過性」と表現したように、中央銀行は新型コロナウイルスへの対応として行った大規模緩和による影響を正確に捉えられていませんでした。
株式市場に関して言えば、新型コロナウイルスによる暴落直前の2020年2月頃にS&P500は史上最高値をつけていましたが、財政出動と大規模緩和により高値を更新、2020年〜2021年は多くの投資家が大きな利益をあげたでしょう。
さて、パウエルFRB議長は2021年10月に自己資産の売却を公表しましたが、彼はこの時点でジャクソンホール発言をはじめ見通しの甘さを確信していたはずです。その後12月のFOMCで利上げや資産買い入れ縮小の話が出てきたというのは都合が良すぎます。
そして2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻が資源価格の急騰を招きインフレ上昇に拍車をかけ、インフレに歯止めをかけるべく大きな利上げを連続で行なったこともあり、2022年末にはインフレの頭打ちが見えたということです。
一方、日本もやはり物価上昇を甘く見ており、物価上昇に加え無限指値オペが極端な円安を招いたことで混乱を招き、12月には「債券市場の正常化」という名目でYCCの長短金利差の変動を拡大させました。黒田日銀総裁が認めることは絶対にありませんが、「日本円の暴落による経済への悪影響」「日銀人事を考慮し次期総裁に金融政策正常化の道筋を作る」ためYCCを見直したことは明らかです。
2023年、上昇下落ともに材料は多い
すでに見えているものだけでも、上昇下落の材料はたくさんあります。
- 米国の不景気懸念
- 米国の不景気懸念からの利下げ期待
- 欧州圏・英国の不景気懸念
- ロシア・ウクライナ情勢
- 中国のゼロコロナ政策の失敗
- 中国の不動産バブル崩壊
- 日本の金融政策転換(利上げ)
材料だけでなく、さまざまな指標まで細かく見ていけば希望も懸念もあげればキリがありません。
2023年、相場の動きはこう読む
2023年、おおまかに言えば1月〜6月と、夏をはさんで9月〜12月で大きく変化する展開を予想します。
- 米国において中立金利として現在見込まれているものは高すぎ(将来インフレ期待を下げるためにFedはタカ派を演じていると見る)、そのため米国長期金利は既に頭打ち
- 米国株は業績/景気調整により上期に下落・下期に反転上昇
- 日本の金利は穏やかに上昇基調(金融政策正常化の可能性あり)
- 日本の株式は円安や値上げの業績恩恵による上昇と海外市場・金融政策変化による下落の綱引きの中で上期は上昇、下期は下落
- ドル円について上期は円高方向ただししばらく高止まり(ドル円上昇が始まった1ドル115円付近まで)、下期は円高方向への動きが進む。ただし米国利下げや日本利上げが発生した場合、円高方向へ急激に動き1ドル105円を下回る。
- 欧州圏はロシアウクライナ情勢に加え、金融引き締めにより経済的に苦しく株価低調。金利上昇余地があるも通貨は大きく上昇しにくい。
- 中国は不透明感が強く、その影響を受けやすいオーストラリアも読みにくい。ただ、年始から大きく悪化するケースは中国のバブル崩壊シナリオくらいではないか。
- 中国以外の新興国は米ドル高が一転すれば株価・通貨ともに上昇
これは各材料をもとにした市場の大まかな動きの予測ですが、私はこのような中長期の展望で市場全体の動きを予想し投資することはありません。確信できる材料にベットしていくスタイルですので、自分の投資先には影響しないのです。ただし、キャッシュ比率(言い換えれば組み入れ比率)や投資期間を決めるにあたっては、大きな流れを外さないようにしています。あくまで市場全体の予測結果を参考までに公開しているという点にご留意ください。
2023年における相場の先行き分析のお役に立てると幸いです。