2022年、株式相場は今後どうなる?SKEW・VIX・VVIXから市場参加者の見方を分析してみた

トレード

各国の中央銀行が金融緩和引き締めに向かっている折、足元の株式市場は2月と比べかなり持ち直しています。

金利が大幅に上昇している中、4月以降の運用を考えていくにあたり、今後どのようにマーケットが動くかはとても気になるところですね。

この記事では、現在のマーケットで直接観測できる指標をもとに、今後のマーケットの動きを考えてみます。

※この記事は好評だった内輪向けに行った講演の内容を書き起こし公開したものです。当記事の情報をもとに投資を行い、発生した損失について当方では責任を負いません。

市場参加者はS&P500の「穏やかな調整」を予想?

様々な指標を見ると、市場の参加者はどうやらS&P500が今後「穏やかに調整」と見込んでいることが示唆されています。

チャートを見ながら順に追っていきましょう。

VIXはやや上昇傾向

まずは、S&P500指数と、オプション価格から計算されるインプライド・ボラティリティを指数化したVIXの比較です。

S&P500とVIX
S&P500とVIX

よく知られているように、VIXは恐怖指数とも呼ばれており、市場の混乱期においてVIXは急上昇を示します。

通常は20前後ですが、一般的には、30〜35を超えてくるとマーケットに大きな動きが生じていると捉えられています。

2022年に入ってからは、年初からFOMC議事録公開に伴う米国マーケットの調整や過度なインフレリスク、地政学リスクの高まり、そしてコモディティ価格の急騰に、3月に米国利上げが実施されたこともあり、株式マーケットは大きく調整しました。

VIXも3月上旬に36まで上昇しましたが、その後は株価が上昇し市場は安堵感に包まれていると言えます。

VVIXも上昇傾向

次に、S&P500指数とVVIXを比較してみましょう。

S&P500とVVIX
S&P500とVVIX

VVIXは一般投資家にはまだあまり馴染みのないものかもしれません。先ほど出てきたVIXは、実は指数先物が存在し、取引することができます。先物が存在するということはオプションも組成することが可能であり、そのオプションのインプライド・ボラティリティを考えることができるというわけですね。

つまり、株価指数(通常はS&P500)オプションのインプライド・ボラティリティがVIX、VIXオプションのインプライド・ボラティリティがVVIXです。

2018年1月までのゴルディロックス相場と、2018年春ごろから2020年3月まで、VIXおよびVVIXはかなり低い水準を維持してきました。これは、ひとつにはVIXやVVIXが売られてきたという理由があります。いわゆる「VIXショート」です。

安定した市場では少しでもプラスを追求するために、投資家は先物ショートやオプション・プレミアムでプラスを狙っていたということですね。

2020年3月以降、それまで大体100を下回っていたVVIXは、水準がやや変わっており、110より少し高い程度が普通になってきました。

理論上、ボラティリティは上昇局面でも大きくなるため、VVIXが上昇するのはそれほど違和感はありません。

ただし、2022年3月は110を下回ってきており、ややVVIXが落ち着く、つまりVIXの変動も落ち着いてきています。

VIXとVVIXの比率は低下?

このままでは「VVIXの動きって、VIXと結局あまり変わらないですね...」ということになってしまいますが、ここで、VIXとVVIXの比率を考えてみましょう。プロットしたのがこちらのチャートです。

S&P500とVVIX/VIX
S&P500とVVIX/VIX

ここでは、VVIXをVIXで割ったものをVVIX/VIX比率と呼びましょう。面白い傾向に気づきます。

VVIX/VIX比率の上昇時は株価の上昇と、VVIX/VIX比率の下落時は株価の下落と一致している傾向が見えますね。

しかも、よく見るとVVIX/VIX比率は株価指数の大きな下落に先行して動いていることがわかります。

VVIX/VIX比率は、それまで大体6前後でしたが、2020年3月の下落以降は5を下回ることが普通になってきました。

とはいえ、VVIX/VIX比率が下がると市場全体が下落していくという傾向は、直近までかなり一致していることがわかります。

足元のVVIX/VIX比率は下落傾向ですね。

SKEWには今後の大きな下落が折り込まれていない

ここでSKEW(いわゆるブラックスワン指数)を見てみましょう。

S&P500とSKEW
S&P500とSKEW

SKEWとは、オプションのコール(買う権利)に対するプット(売る権利)の需要の強さを数値化したものです。 SKEWが高いほど、プットの需要が強く、株価(S&P500)が大きく下がるリスクが大きいとされます。

2020年3月に一度急落したSKEWは、その後ジリジリ上昇していき、株価上昇の中で下落に備えたプット需要が強かったことがわかります。

一方、2022年に入り、SKEWは下落し、プットの需要がかなり減ってきたことがわかります。

SKEWから見れば、2022年に市場全体がそれなりに大きく調整して以降、市場参加者は更なる下落に備えたプットを欲していないようです。つまり、市場参加者は大きな下落が起きるとは思っていないということなのです。

ここまで総合して考えてみると、VVIX/VIX比率から全体としては調整見込み、ただしSKEWからは大きな下落は見込まれていないということになりますね。

米国長期金利を先行するVVIX/VIX比率が暗示する未来

最後にVVIX/VIX比率と米国長期金利の比較を見ておきましょう。

S&P500とSKEW
米国10年金利とVVIX/VIX

一見すると「あまり関係なくないですか?」と言われそうですが、赤色の米国10年のチャートを半年分前倒ししてみる(赤色のグラフを左に動かす)と、かなり似た動きをしていることがわかると思います。

言い換えると、VVIX/VIX比率の動きは米国長期金利を先行して動いているのではないか?ということです。

(さすがに2020年3月のショック時には先行する動きとなっていないですね...)

そしてこれらから予想される動きは、足元でかなり大きく上がった米国長期金利は一転した下がるのでは?というところに行き着きます。

米国では既に年内の利上げがかなり織り込まれているのに加え、FOMCメンバーによる政策金利のドットチャートは2022年に引き上げたのち、そう遠くない将来また引き下げを行うという示唆にも一致します。(この点についてはまた別の記事で見ていきましょう)

これらを踏まえてみると、足元でかなり大きく上がった米国長期金利はそれほど遠くないうちに一転してまた低下し、株価も同様に一度調整した後に上昇するというシナリオが浮かび上がります。

この転換のタイミングには諸説ありますが、ドットチャートからは2022年中には予想されていないことが読み取れます。(ちゃんと紹介していないので、何を言っているんだと思われるかもしれませんがご了承ください)ただし、VVIX/VIX比率はそれよりも早いペースで相場への折り込みが進んでいるように見えます。

2022年上半期における相場の先行き分析のお役に立てると幸いです。